2007/06/29

不動産担保ローンと任意整理 4

E 御中
                       平成19年 月 日

〒394-0028長野県岡谷市本町四丁目1番37号本町ビル4階
                     小口一成司法書士事務所
       後記依頼者両名代理人司法書士 小 口 一 成
                    電 話0266-24-5402
                     FAX0266-24-5406

              和解申入書
冠省
 後記依頼者両名の代理人として通知いたします。
 さて、後記依頼者○○が、貴社との金銭消費貸借契約に基づき、貴社に対して弁済した利息を利息制限法に基づき充当し直すと、○○は貴社からの借入金をすでに完済しており、金○円の過払いが発生しているものと思われます(同人から貴社に対する平成19年○月○日付け通知書のとおり)。
 そこで、別紙和解書(案)のとおりの和解を提案いたします。
 ご承諾いただけます場合は平成19年○月○日までに、当職までその旨ご一報くださいますようお願い申し上げます。ご承諾いただけない場合にはその理由を、同日までにご回答ください。
 期日までにご回答をいただけない場合には、○○簡易裁判所に訴訟を提起いたします。その際には訴訟費用だけでなく、司法書士費用を損害として賠償請求させていただきます。

 依頼者の表示
  住  所 長野県○市○番地
  氏  名 ○ ○
  生年月日 昭和 年 月 日

  住  所 長野県○市○番地
  氏  名 △ △
  生年月日 昭和 年 月 日
                                草々

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            和 解 書

 ○○を甲、△△を乙、アイフル株式会社を丙とし、甲・乙・丙間において以下のとおり和解契約を締結する。

1 甲と丙は、甲・丙間の金銭消費貸借取引に関して、相互に一切の債権債務が存在しないことを確認する。
2 丙は、乙所有の別紙物件目録記載の不動産についてなされている、長野地方法務局○○支局平成 年 月 日受付第  号の根抵当権設定登記の抹消登記手続きに必要な書類を速やかに甲、乙代理人に交付する。但し、登記手続費用は甲および乙の負担とする。
3 甲は、丙に対するその余の請求を放棄する。
4 甲・乙・丙間には、本条項に定める他、何らの債権債務が無いことを相互に確認する。

平成  年  月  日

       甲  長野県○市○番地
                      ○ ○
            (昭和 年 月 日生)

       乙  長野県○市○番地
                      △ △
                (昭和 年 月 日生)

          長野県岡谷市本町四丁目1番37号 本町ビル4階
           甲、乙代理人司法書士 小 口 一 成
         (長野県司法書士会所属 認定番号 第110090号)

       丙

物 件 目 録 (省略)

**************************

7 和解成立
 その後、Eから私の事務所に電話があり、Eの計算によればまだ数百円程度の貸金債権が残る、とのことであったが、その程度の違いであれば互いに債権債務無しということで和解してもらいたいと押したところ、数日後、会社の決済が取れたとのことで、あっさりと和解に至った。
 その際に交わした和解書の内容は、私が提案した上記和解案とほぼ同様のものである。
 和解書を取り交わした数日後、Eより根抵当権抹消書類一式が私の事務所に送付され、無事に抹消登記手続きを済ませることができた。

8 課題
 上記民事局長通知によれば、不動産担保が設定されている事案においても司法書士が代理人として交渉可能なケースはけして少なくないものと思われる。
 反面、この事例のように、本人による交渉では貸金業規制法の適用を主張して譲らなかった業者が、司法書士が介入するや、そうした主張を引っ込め、即座に利息制限法に基づく解決に応じるという姿勢には、やはり問題があると思う。
 利息制限法による解決は、法律家の介入の有無にかかわらず、実現されなければならない。今後こうした事例の簡易迅速な解決が、特定調停や任意整理の場で図られることを願いつつ、自らも行動していきたい。

(了)

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2007/06/27

不動産担保ローンと任意整理 3

5 Eからの回答
 その数日後、Eから本人に対し、「当社は貸金業規制法の定めに則った業務を行っているから、本件の利息の契約は有効と考えており、貴殿からの根抵当権の抹消請求には応じられない」旨の回答書が送られてきた。

6 Eとの交渉
 この段階に至るまで、私は、Eとの交渉は司法書士の代理権の範囲を超えると考えていた。なぜなら、この時点でEはあくまでも300万円の貸金債権の存在を主張していたことに加え、根抵当権の抹消登記請求訴訟における訴訟物の価額は、不動産の固定資産評価額ないし被担保債権額が基準となることから、いずれにしても司法書士の代理権の範囲を超えると思われた。そうすると解決を図るためには本人訴訟を提起するか、弁護士に依頼するしかないように思われた。
 そこで、本人訴訟の準備を進める傍ら、本件の「訴訟物の価額」について改めて調べてみた。
 本件の訴訟上の請求として考えられるのは、①貸金300万円の不存在確認請求、②過払金数百円の返還請求、③根抵当権の抹消登記請求である。このうち、①を請求の趣旨に含める必要があるかについては、事案にもよるが、通常の過払金請求訴訟では①は不要であり、訴状に貼る印紙も、過払金額に応じて計算すれば足りるとされている。つまり、過払金請求訴訟においては貸金業者が主張する貸金の額は「訴訟物の価額」に含める必要はないとされている。
 以上により、本件においても②と③のみを請求の趣旨とすれば足りると考えた。②の請求における訴訟物の価額は数百円であるから問題はない。問題は③の請求における訴訟物の価額である。
 改めて調べてみると、訴訟物が担保物権(登記請求を含む)の場合の「訴訟物の価額」については、以下の基準が存することがわかった(「訴訟物の価額の算定基準について」昭和31.12.12民事甲412民事局長通知)。
 (1)優先順位の担保物権がない場合は、原則として「被担保債権の金額」による。但し、目的たる物の価格が被担保債権の金額に達しないときは、目的たる物の価格による。
 (2)優先順位の担保物権がある場合も、原則として「被担保債権の金額」による。但し、目的たる物の価格に優先順位の担保物権を考慮して修正を加えた金額が、被担保債権の金額に達しないときは、その修正金額による。
 本件では、「優先順位の担保物権」に該当する、銀行の住宅ローン債権を担保するための抵当権が設定されていた。そうなると、本件では、上記(2)の「優先順位の担保物権を考慮して修正を加えた金額」(つまり不動産の価格から優先順位の住宅ローン債権額を差し引いた金額)が「被担保債権」の金額(300万)に達しないどころか、司法書士の代理権の上限である140万円にも満たないことが明らかである。
 したがって、②と③を請求の趣旨とする以上、訴訟物の価額は140万円を超えないことになる。そうであれば、訴訟前の交渉も、司法書士が行うことができるはずである。
 そこで、私は改めて本人からの依頼に基づき、Eに対して次の通知をした。

(つづく)

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2007/06/25

不動産担保ローンと任意整理 2

2 相談時の負債の状況
 相談時に本人から聴き取った負債の状況を以下に簡略化して示す。
 サラ金A 50万
 サラ金B 50万
 サラ金C 50万
 サラ金D 50万
 サラ金E 300万(根抵当権設定済み)

3 方針決定
 Eの債権については根抵当権が設定されていたことから、すでに述べたような問題(リスク)を踏まえて、とりあえず、AからDまでの4社につき任意整理を行うこととし、Eについては当面の措置として、これまでどおりの支払いを続けていくことにした。
 その後、AからDについては利息制限法に基づく再計算を経て、分割弁済の和解を締結するなど、一定の解決を見た。

4 Eへの対応
 一方、Eとの取引は、不動産担保が設定される以前の分も含めると、かなりの長期に渡っており、利息制限法による再計算をすれば、残債務はかなり圧縮されると思われた。そこで、債務者本人からEに対し、取引履歴の開示を請求したところ、当初からの取引履歴が開示され、利息制限法による再計算を行ったところ、残債務額は数万円程度であることがわかった。
 そこで、計算方法の違いによる多少の誤差も考慮して、Eに対し、残債務額プラスα(数百円程度)の金額を振り込んだ上で(この時点でEに対して数百円程度の過払い状態)、本人名で以下のとおり内容証明郵便で通知した。

*********************

                   平成19年 月 日
草津市○町 番 号
被通知人 E 御中

                 長野県○市○番地
                 通知人    ○  ○
                 (昭和 年 月 日生)
                 長野県○市○番地
                 通知人    △  △
                 (昭和 年 月 日生)

            通 知 書
 通知人○○は、貴社との金銭消費貸借契約に基づき、借入と弁済を繰り返してきました。貴社から開示された計算書に基づき、○○がこれまでに貴社に対して支払った利息につき利息制限法に基づく充当計算を行ったところ、○○はすでに貴社からの借入金を完済していると思われます(利息制限法に基づく再計算書は別に普通郵便にて送付いたします)。
 ついては、本書面到達後2週間以内に、通知人△△所有の後記不動産に対して設定された貴社名義の根抵当権(長野地方法務局  支局平成  年 月 日受付第  号)の抹消登記手続きに必要な書類一式を、通知人△△宛に送付してください。期日までに送付いただけない場合には訴訟を提起させていただきます。

 不動産の表示 (省略)

******************

(つづく)

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2007/06/22

不動産担保ローンと任意整理 1

      不動産担保ローンと任意整理

                  司法書士 小口一成

1 はじめに
 債務者所有の不動産に貸金業者が担保物権(多くは根抵当権)を設定している場合の債務整理には、困難がつきまとう。
 不動産に根抵当権を設定している債権者は、債務が履行されなければ不動産を競売にかけることができるため、任意整理や特定調停においては、利息制限法に基づく引き直しには応じても、一括弁済以外は認めないという態度に固執する場合が多い。
最近、一部の簡易裁判所の特定調停において、不動産担保付の債権についても利息制限法による引き直しをした上で、残債務について長期の分割弁済を認めた事例が報告されており、歓迎すべきことであるが、現状ではそうした解決が一般的になっているとは言いがたい。
 ここに、私が最近関わった一つの事例を報告する。すでに同様の事例を手がけている人達(とくに法律家)にとっては、何を今更と思われるかもしれない。しかし、私自身がそうであったように、債務整理の実務経験が浅い司法書士や、専門家の力を借りずに特定調停等によって自分で解決を図ろうとする方々には、多少なりとも参考にしていただける部分があると思う。
 なお、本稿中、司法書士の代理権の範囲に関する記述はあくまでも私見に過ぎない。
(つづく)

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