2005/07/13

提訴前の照会・証拠収集処分

提訴前の照会・提訴前の証拠収集処分の活用のススメ(研修会講義用レジュメ)
                      平成17年7月15日
                        by 小口一成
1 はじめに
 『過払い』が予想される場合、多くの業者は何かと理由をつけて開示を拒む。個人情報保護法の施行で少しは改善されるのではとの期待もあったが、かえって本人確認を根拠にあれを出せこれを出せと要求しつつ、結局は開示をしないというひどい例も報告されている。
 そんな場合、今までであれば予想計算なり頭0計算なりに基づいて「とりあえず」提訴するしかなかったが、文書提出命令についての考え方や評価(そもそも命令を出してくれるかという問題と、業者が命令に従わなかった場合の真実擬制の問題)は、裁判官によっても異なり、結果として訴訟が必要以上に長期化する場合もある。できることなら提訴前にある程度の証拠は手に入れておき、訴訟を迅速かつ有利に進めたいと思うのは当然である。
 アメリカには証拠開示手続き(ディスカバリー)が完備されており、提訴前に証拠を手に入れることが比較的容易な制度となっている。羨ましい限りである。だが羨ましがっているだけでは世の中は変わらない。アメリカの制度には程遠いが、我が国の現行民事訴訟法上の手続きをフル活用することで、それなりの成果を得ることは可能である。少なくとも実際に使ってみて私はそのように感じている。それがここで取り上げる提訴前の照会と、それを前提とした提訴前の証拠収集処分である。

2 提訴前の照会(132条の2)
 ①提訴予告通知を書面(配達証明付内容証明郵便が望ましい)でする
 ②予告通知後(書面到達後)4ヶ月以内に(もちろん予告通知と同時でもよい。よって多くの場合は予告通知と
  同時かつ同一の書面で行なっている)、
 ③主張又は立証を準備するために必要であることが明らかな事項について、
 ④相当の期間を定めて、
 ⑤書面で回答するよう、
 ⑥書面で照会することができる
 *この段階で開示してきた業者(武富士(H元~)、アコム(H2~)、アイフル(S63~)、プロミス(S60~)、レイク(過去10年分)など)

3 提訴前の証拠収集処分(132条の4)←地方裁判所が行なう
 ①予告通知後(書面到達後)4ヶ月以内に、
 ②予告通知者の申立てにより、
 ③予告通知に係る提訴がされた場合の立証に必要であることが明らかな証拠となるべきものについて、
 ④申立人がこれを自ら収集することが困難であると認められるときは、
 ⑤相手方の意見を聴いて、
 *この段階で開示してきた業者(CFJ(H3~)、プロミス、アイフルなど)
 ⑥提訴前の証拠収集処分をすることができる
  具体的に提訴前の証拠収集処分とは…
 ・文書の所持者(多くの場合は相手方)にその文書の送付を嘱託すること(いわゆる「文書送付嘱託」1項1号)
 ・必要な調査を官公署その他の団体(例えば債権譲渡会社)に嘱託すること(いわゆる「調査嘱託」1項2号)
 *この段階で開示してきた業者(エル・アンド・エム・ワールド(H7~))
 *ここまでやっても開示しない業者(アエル)   

4 いくつかの注意点
 ・提訴前の証拠収集処分の申立ては、申立人もしくは相手方の普通裁判籍所在地又は文書の所持者の居所もしくは調査の嘱託を受けるべき団体の所在地を管轄する地方裁判所にしなければならない(132条の5)。したがって、多くの場合、申立人の普通裁判籍所在地を管轄する地方裁判所に申し立てればよい。
 ・提訴前の証拠収集処分は、地方裁判所の手続きであるから、司法書士が代理して行なうことは不可。本人名で申立てるしかない。(提訴前の照会は、司法書士が代理して行なうことができる)
 ・申立人は、裁判所書記官に対し、事件記録(嘱託に応じて裁判所に提出された文書や調査結果の報告書、意見書等)の閲覧、謄写を請求できるとされている(132条の7)。そのため、司法書士が閲覧、謄写を行なうには申立人からの委任状が必要である(この点は裁判所によっても取り扱いが異なる。まずは躊躇せずにやってみよう!)
 ・提訴前の証拠収集処分の目的を達した場合(相手方から任意に文書の送付を受けた場合、あるいは裁判所に目的とする文書が提出された場合など)には申立てを取下げればよい。
 ・相手方から任意に、あるいは裁判所に対し文書が提出されたが、いまだ目的を達していない場合(取引途中からの履歴であることが明らかであるのに、それについて相手方から何の説明もない場合など)には、引き続き証拠収集処分を求める旨の「上申書」を裁判所に提出すべきである。但し、相手方が意見書等により文書の不存在や文書の廃棄を明言しているような場合には、それ以上やっても無駄であるので、証拠収集処分は取り下げ、速やかに提訴したうえで本人尋問や文書提出命令等で攻めるべきである。
 ・提訴前の証拠収集処分の申立てについての裁判に関する費用は、訴訟費用とは考えられておらず、申立人の負担とされている(132条の9)。つまり勝訴してもそのままでは被告に負担させることができず、原告の持ち出しになってしまう。したがって、提訴する際には、証拠収集処分の申立てが必要となったのは相手方が開示請求に応じなかったためである旨を主張し、そのために要した費用を不法行為による損害ととらえ、損害賠償請求をあわせて行なうべきである(別添訴状参照。但しこれは全くの私見である)。

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