2005/07/25

障害者自立支援法案に挑む 3

今回のセミナーには、障害者やその家族の方々も、多数参加されていた。
車椅子の方、聴覚障害者、統合失調症の息子を持つ親、福祉施設の職員、そういった方々と肩を並べて勉強をさせていただいた。これは僕にとって、生まれて初めての貴重な経験だった。

「障害者自立支援法案が可決され、応益負担が導入されたら実際に私達の生活はどうなってしまうのですか?」
という問いかけに対して、登壇者の一人(この方も車椅子が必要な障害者である)が次のような例をあげて説明された。
「みなさんの中には、私も含めて、今日のセミナーに来るのにも、人の手を借りなければ来られなかった方も多いと思います。そうした「移動支援」などのサービスも、今後は受けるサービスの量に応じて費用負担を求められることになります。その結果、私たちは食べること、排泄など、生きていくために「最低限必要な」部分についてのサービスを優先し、今日のような勉強会に参加したいと思っても、費用負担のことを考えてあきらめるしかない、そういうことになるわけです。私達障害者は、食べて、寝て、ただ生きていなさいと。それ以外のことは我慢しなくてはならなくなるでしょう」

愕然とした。
思わず司法書士である我が身を省みた。研修会といえば、興味があってもなくても、とりあえず義務だから、そうでなくともみんなが行くから自分も何となく行かなければ取り残されるような気がするから、とりあえず行く。そしてなるべく目立たないように後ろの席に座る。たいていの場合、質問もしなければ、意見もしない。それで研修に出た気でいる。
障害者の方々の「学ぶ」ことに対する真剣さとのあまりのギャップに、僕は恥ずかしくなった。
そしてこのとき感じた恥ずかしさは、自分一人の胸にしまっておいてはいけない、必ずや自分の周りの司法書士たちにもわかってもらわなければいけないと思った。それをしないでおいて、生意気にも障害者自立支援法案がいいとか悪いとか言う資格はない。まずはそういう身近なところから考えを改め、生きる姿勢を改めていかなければならない。
(つづく)

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2005/07/24

障害者自立支援法案に挑む 2

緊急セミナー「どうなるの?障害者自立支援法」に出席してきた。
会場はメルパルク長野。主催は長野県障害者生活支援事業連絡協議会。
開始時間よりかなり早めに会場に着いたのだが、すでに会場はほぼ満員で、参加者の関心の高さというか、必死さが、ひしひしと伝わってきた。その後も参加者が続々と会場に詰め掛け、席が足りなくなってしまった。主催者の予想を遥かに上回る数の参加者だったようだ。それだけ、今回の法案には皆が関心を持っているのだと思った。
辻直哉さん(DPI日本会議)の基調講演の後、各分野の代表の方々が登壇されてシンポジウムが行なわれた。登壇者は、辻直哉さんのほか、相沢敏正さん(長野県障害福祉課在宅支援ユニット・ユニットリーダー)、武藤香織さん(信州大学医学部保健学科講師)、大下京子さん(長野県障害者生活支援事業連絡協議会代表)。
コーディネーターは池田純さん(社会福祉法人信濃の星 長野障害者自立支援センター所長)が務められた。
辻さんと大下さんは、自身も重い障害を抱えており、車椅子で登壇されたのだが、お二人とも、障害者であることをこちらが忘れてしまうほどに元気で、知識が豊富で、頭の回転も速く、そのことにまず僕は驚いた。
基調講演、シンポジウムともに非常に中身が濃く、あっという間に3時間が経ってしまった。
今日のセミナーに出席してみて、障害者自立支援法案のどこが問題なのかということが、少しは理解できた。
理解するということが、自分の言葉で表現できるようになることだとすれば、僕は次のように表現する。
すなわち、
障害者自立支援法案には、確かに障害者の自立を促進しようとする内容が含まれている。ただそれが、あまりにも抽象的で、漠然としていて、現場の人たちからすると、じゃあ現実に、具体的にどうするのかという点がほとんど明らかにされていない。むしろ法案のかなりの部分は当事者、つまり障害者及びその家族に対してこれまで以上に費用負担を求める規定で占められている。制度の維持のためにはそれが必要なのだという。支援費制度の破綻による財政難が、今回の法案の前提となっている。障害者の自立を支援するためにはお金がかかる。それは避けようがない。だから応能負担をやめて、応益負担を導入するという。応益負担というけれど、障害者にとっての「益」とは何を意味するのか。小泉首相は次のように説明した。「障害の有無にかかわらず、地域で安心して暮らせることが障害者にとっての『益』である」と。だがそんなことは当たり前のことである。障害者が地域で安心して暮らせるようになるのは当たり前のことであって、負担を求める根拠とすべき「益」ではない。今の法案は、障害者が健常者に歩み寄ることを要求する一方で、健常者が障害者に歩み寄るという視点が欠落している。そこが問題である。
障害者が健常者に歩み寄るべきなのか、健常者が障害者に歩み寄るべきなのか。
そんなことは、今さら考えてみるまでもなく、明らかなことではないか。
今よりお金が要ることはわかっている。障害者が、せめて普通の生活を送りたいと願う。それを支援しようというときに、必要な費用を誰が負担するか。障害者自身に負担を求めるのか。それとも、健常者に負担を求めるのか。簡単に言えばそういうことなのかもしれない。もちろんそんなに単純ではないだろうが。
問題は、健常者のほとんどが、この問題に無関心であるということだ。そこが問題なんだと思う。
(つづく)

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2005/07/20

障害者自立支援法案に挑む 1

障害者自立支援法案の内容に問題があるらしいということは、最近の新聞記事で知った。法案そのものを読んだわけではない。法案を読んでもいない自分に、軽々しく法案に反対する資格などあるはずがない。そう思ってここ数日自分なりに色々と調べている。だが調べれば調べるほどに、この問題は思ったより根が深く、とても中途半端な作業では手に負えないということがわかってきた。だからといって投げ出すわけにはいかない。どこから手を付けるべきか。インターネットで検索すると、この分野の専門家らしき方々の論文や意見書などがあったので読んでみた。どれも目から鱗が落ちるものばかりだった。そのうちに、どうやら今回の法案は、厚生労働省が昨年10月に公表した、「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」がもとになっているらしいということが何となくわかってきた。雲をも掴む話しではあるが、とっかかりとして、まずはこの「グランドデザイン」とやらを熟読してみようと思った。→http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/10/s1012-4c.html

(つづく)

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2005/07/14

「障害者自立支援法案」にNOと言わなければ

「障害者自立支援法案」の成立に向けた審議が進められている。
「自立支援」というと聞こえは良いが、この法案の正体は、障害者に対し、福祉・医療費の負担増を求めようとするものに他ならない。
現在、所得に応じて負担割合が決められている「応能負担」から、受けるサービスの量に応じて負担させる「応益負担」に転換しようとする内容をも含んでいる。
通常、障害が重い人ほど多くのサービスを必要とすることから、応益負担が導入された場合、障害が重い人ほど多くの費用負担を強いられることとなる。
一方、我が国では障害者の所得保障はとてもではないが充分とはいえない状況にある。
そんな中、応益負担を導入することは、障害者の人権を無視するに等しい暴挙である。
僕はふだんから、「法律家は弱者のために戦わなければならない」とか、「人の痛みのわかる人間になりたい」と思い、実際に口にしたりもしている。
それなのに、こんな酷い法案が成立しようとしていることに注意をはらわず、今の今まで何もしなかった。
今となっては正直、何をどうしたらいいのかわからない。
でも少なくとも今の僕は声も出せるし、耳も聞こえる。目も見えるし、字も書けるし、自分の足で歩くこともできる。
せめて大きな声でNOと言えないようでは、一人の人間、大人として余りにも恥ずかしい。
明日から自分に何ができるかを考え、行動していきたい。

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