2005/10/07

「訴訟費用」回収のススメ 改訂版

本年8月12日にこのブログにアップした「訴訟費用回収のススメ」に、一部誤りがありました。
お詫びとともに、ここに修正版をアップします。

「訴訟費用」回収のススメ
平成17年10月7日改訂
司法書士 小 口 一 成

第1 はじめに
 サラ金相手に過払金返還請求訴訟を提起し、めでたく勝訴判決を取得した。当然ながら、判決主文には「訴訟費用は被告の負担とする」と書かれている。
 文字どおり、訴訟費用は被告に払ってもらうべきである。
 ところが、判決は単に「被告の負担とする」と言っているだけで、具体的な訴訟費用の金額までは明示していない。
 訴訟費用の額を確定するためには、別途「訴訟費用額の確定の申立て」を行なう必要がある。
 「訴訟費用額の確定の申立て」は、判決が確定した後に、第一審裁判所の裁判所書記官に対して行なうこととされている(民事訴訟法71条)。申立ては書面で行う。その際、費用計算書、疎明資料を添付する。申立書および費用計算書は相手方に直送する(民事訴訟規則24条)。
 注意すべきなのは、申立書には「費用計算書」を添付しなくてはならないとされていることだ。つまり、訴訟費用の金額がいくらになるのかは、裁判所が親切に計算してくれるのではなく、申立人が自ら計算して裁判所に提出して認めてもらわなくてはならないのである。
 訴訟費用の金額を計算するにあたり、そもそも訴訟費用とは何かを知らなければならない。
 訴訟費用の内容及び金額は、法律が事細かに規定している。この法律は非常に難解である。まるで一般市民にたやすく申立をさせないように、わざと難しく書いているのではないかと思うほどである。司法書士の私が読んでもよくわからない部分がある。したがって本稿では、貸金業者に対する過払金返還請求訴訟の実務上、不必要と思われる部分を思い切ってカットし、解説を試みる(かく云う私自身、これらの法令を熟知しているわけではないことから、一部推測が含まれていることをお断りしておく)。
 その上で、確定判決に基づき、相手方から訴訟費用を効率的かつ確実に回収するための方法を提案することとしたい。
 以下、「法」とは「民事訴訟費用等に関する法律」を、「規則」とは「民事訴訟費用等に関する規則」を指すこととする。

第2 訴訟費用の内容及び額(法2条)
 法律上、訴訟費用として認められている主なものは以下のとおりである。「費用計算書」には、以下の項目にしたがい順次金額を記載し、それらを最後に合算することになる(別紙「計算書」参照)。

1 訴えの手数料(法2条1号、3条)
 訴状に貼った収入印紙の金額である。

2 費用(法2条2号、11条①)
 証拠調べ及び書類の送達に必要な費用である。このうち、「証拠調べの費用」はこれを実施したときにのみ必要となり、「書類の送達費用」は必ず必要となるものである。具体的な金額については、最終的には裁判所書記官に確認するしかない(ただし「書類の送達費用」は、予納郵券の額から最終的に裁判所から返還を受けた郵券の額を差し引くことでもおよそ明らかとなる)。

3 当事者等が口頭弁論期日等に出頭するための旅費、日当及び宿泊料(法2条4号)
イ 旅費(規則2条1項)
 日本国内の旅行においては、当事者等の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の主たる庁舎の所在する場所と、出頭した場所を管轄する簡易裁判所の主たる庁舎の所在する場所との間の距離(1km未満の端数は切り捨てる。)に応じて、以下のとおり定められている。
 距離が不明なときは裁判所書記官に尋ねればよい。
・10km未満のときは、300円
・10km以上100km未満のときは、1kmにつき30円を乗じた額
・100km以上301km未満のときは、1kmにつき50円を乗じた額
・301km以上のときは、301km未満の部分については1kmにつき50円を乗じた額、301km以上の部分については1kmにつき40円を乗じた額
・これらの場所が同一の場合には、300円とする(但し、出頭場所を中心とする半径500mの円内にある場合は0とする)
例)当事者の住所地を管轄する簡裁が岡谷簡裁、出頭場所を管轄する簡裁が松本簡裁の場合、岡谷簡裁と松本簡裁との距離は21kmであることから、30円×21=630円となる。
なお、日本と外国との間の旅行を含む場合においては、通常の経路及び方法によって現に支払った交通費の額とする。

ロ 日当(規則2条2項)
 出頭及びそのための旅行に現に要した日数に応じて、一日あたり3950円とする。わかりやすく言えば、口頭弁論期日一回につき3950円ということになる。

ハ 宿泊料(規則2条3項)
 出頭及びそのための旅行のために現に宿泊した夜数に応じて、宿泊地の区分ごとに国家公務員等の旅費に関する法律に定められた額(一泊8500円又は7500円。詳細は省略)とされている。

4 代理人(法定代理人及び特別代理人を除く)が口頭弁論期日等に出頭した場合における旅費、日当及び宿泊料(法2条5号)
 上記3の例により算定した額である。但し、当事者等が出頭した場合における旅費、日当及び宿泊料の額として裁判所が相当と認める額を超えることができないとされている。このため、当事者の住所地と出頭場所たる裁判所の間の距離に比べて、訴訟代理人の事務所が必要以上に遠方にある場合(例えば当事者と裁判所がともに長野県内にあり、訴訟代理人の事務所が東京にあるようなケースなど)には、「裁判所が相当と認める額」の範囲内に制限される場合もあるのではないか。

5 訴状その他の申立書、準備書面、書証の写し、訳文等の書類(当該民事訴訟等の資料とされたものに限る。)の作成及び提出の費用(法2条6号)
 事件一件につき、事件の種類、当事者等の数並びに書類の種類及び通数を基準として、最高裁判所が定める額である。
 具体的には、以下のとおりとされている(規則2条の2。但し主なもののみ)。
 なお、相手方の数が5名を超える場合は増額されることとなるが、この点は省略する。
① 訴えの提起(手形訴訟、小切手訴訟並びに少額訴訟によるものを除く)、控訴の提起、上告の提起、上告受理の申立て、再審の訴えの提起、保全命令の申立て、保全抗告の提起、保全命令の申立てについての裁判に対する抗告の提起→1500円。
 但し、次の場合にはその定めるところにより算出して得た額を加えた額。
・当該民事訴訟等の資料とされた訴状その他の申立書及び準備書面その他の当事者の主張を記載した書面の合計の通数(「枚数」ではないことに注意。以下同様)が5を超えるときは、その超える通数15までごとに、
1000円。
・当該民事訴訟等の資料とされた書証の写しの通数が15を超えるときは、その超える通数50までごとに、1000円。
例)当該事件において提出した訴状、準備書面等の合計通数が6通、書証の写しの通数が20通のとき→1500+1000+1000=3500円となる。

② 和解の申立て、支払い督促の申立て→800円。

③ 裁判所への申立てにより、基本となる手続が開始されるもの(①及び②を除く)
  →1000円。
 例)債権差押命令申立などはこれに該当する。但し当該申立書の作成及び提出に要する費用は「訴訟費用」ではなく「執行費用」であることから、訴訟費用確定処分を経ることなく債権差押命令申立書に「執行費用」として記載していけばよい。

④ 手形訴訟、小切手訴訟の終局判決に対する異議の申立て、少額訴訟の終局判決に対する異議の申立て、保全異議の申立て、保全取消しの申立て→①の例により算定した額。

⑤ 文書提出命令の申立て、訴えの提起前における証拠保全の申立て→800円。

⑥ 職権により開始された基本となる手続に係る事件→800円。

6 官庁その他の公の団体又は公証人から書類(当該民事訴訟等の資料とされたものに限る。)の交付を受けるために要する費用(法2条7号)
→当該官庁等に支払うべき手数料の額に、交付1回につき160円を加えた額(規則2条の3)。
例)・法人の資格証明書1通の交付を受けた場合→1000+160円=1160円。
 ・送達証明書1通の交付を受けた場合→150+160円=310円。
 ・確定証明書1通の交付を受けた場合→150+160円=310円。
 なお、上記のうち、送達証明書と確定証明書は「訴訟費用」ではなく「執行費用」であるため、「訴訟費用確定処分」を経ることなく、強制執行の申立書に「執行費用」として記載していけばよい(強制執行の申立書に添付するための資格証明書についても同様である)。

7 法令の規定により裁判所が選任を命じた場合において当事者等が選任した弁護士又は裁判所が選任した弁護士に支払った報酬及び費用(法2条10号)
→裁判所が相当と認める額。

8 裁判所が嘱託する登記又は登録につき納める登録免許税(法2条11号)
→その登録免許税の額。

9 強制執行の申立てもしくは配当要求のための債務名義の正本の交付、執行文の付与又は民事執行法29条の規定により送達すべき書類の交付を受けるために要する費用(法2条12号)
→裁判所その他の官庁又は公証人に支払うべき手数料の額に、交付又は付与1回につき580円を加えた額(規則2条の4)。
例)執行文付与を1回受けた場合 →300円+580円=880円。
 なお、執行文の付与に要する費用は「訴訟費用」ではなく「執行費用」である。したがって訴訟費用の確定処分を経ることなく、強制執行の申立書に「執行費用」として記載していけばよい。

第3 訴訟費用の回収の仕方
 ここでは、判決確定後、相手方から訴訟費用を効率よく確実に回収するための方法の一例を紹介し、参考に供したい。但しあくまでも一例に過ぎないものであり、各位の工夫を期待したい。

1 判決正本が送達された後、2週間程度が経過した頃合を見計らって裁判所に電話をし、判決の確定の有無及び確定日を確認する。

2 上記第2を参考にしながら、「費用計算書」を作成する(別紙「計算書」参照)。

3 相手方に対し、判決によって認容された金額の全額(文字どおり、支払日までの損害金及び訴訟費用を含めた全額)の支払いをfaxで請求する。その際「費用計算書」を添付するとよい。請求は期限を切って行い、期日までに支払いなき場合は強制執行を行なう旨を記載する(別紙「通知書」参照)。

4 期日までに支払いがない場合は、速やかに「訴訟費用額の確定の申立」を行う(別紙「訴訟費用額の確定の申立書」参照)。

5 申立てがあると、裁判所書記官は、相手方の意見を聴いた上で「訴訟費用確定処分」を行うこととされている。訴訟費用確定処分の主文には「相手方は、申立人に対し、金何円を支払え」と書かれることになる(この確定処分自体が債務名義となる(民事執行法22条4の2号))。確定処分の正本は相手方に送達される。

6 確定処分の正本が送達されると、相手方(つまり被告)は諦めて訴訟費用を払ってくることが多い。したがって慌てて強制執行をしないこと(余計な費用をかけないためにも…)。

7 確定処分が出てもなお相手方が訴訟費用を含めた支払いをしない場合には強制執行を行うしかない。この段階で初めて判決に執行文の付与を受けるとともに、判決の確定証明書(仮執行宣言が付されていれば不要)、判決の送達証明書、訴訟費用確定処分の送達証明書の交付を受けた上で、強制執行の申立を行う。なお、訴訟費用確定処分についての確定証明書は不要である(民事執行法22条4の2号参照)。強制執行の申立に際しては、上記第2を参考に、差押命令申立書の作成・提出に要した費用(通常は1000円)、執行分の付与を受けるのに要した費用(通常は880円)、差押命令申立書に添付するための資格証明書、確定証明書、送達証明書の交付を受けるのに要した費用(通常はそれぞれの印紙代に160円を加えた額)を「執行費用」として申立書に記載していけばよい。
                             以上

  参考資料
1 通知書(判決後、訴訟費用額の確定処分を待たずに訴訟費用を含めて請求するためのもの。)
2 訴訟費用額の確定の申立書
3 計算書(上記申立書に付属しているので、省略します。)
4 請求書(判決後、訴訟費用額の確定処分を待たずにとりあえず訴訟費用以外の部分のみ請求するためのもの。上記の解説では触れていませんが、実務上使われることが多いため、参考までに添付します。)

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