過払い訴訟の論点 9
で、その後、資料24ですけれども、これが諏訪簡裁の18年6月20日判決。この6月20日の判決はCFJなんですけれども、私は普通にいつもどおりに過払金返還訴訟を起こしていったんですね。まあ司法書士費用5万円とかも請求してますけれども、それはともかくとして、普通にやっていったところ、CFJが、本件の取引は4口に分かれてるんだというような主張をしてきました。25ページの真ん中辺、ア・イ・ウ・エっていうふうに4つそれぞれ、まあ確かにちょっとずつ間は空いてるわけです。で、当然に充当されるものではないと。で、(3)のところで、アの取引において過払金40万円が生じていますが、それは2006年1月10日の経過で時効消滅したなんていうことも言っています。で、それに対して私は、そんなものは認められないという準備書面を出して、その理由の中で、さっきの東京高裁の判例を一応、甲号証として付けて、判例の流れはこうなんだと。公平の観点と当事者の合理的意思解釈からすれば一連計算すべきなんだという、まあ、わりと簡単な準備書面ですけれども出していったところ、裁判官はこういうことを言いました。まあ裁判官って個性があるので、人によって違うんですね。で、岡谷、諏訪は同じ裁判官なんですけれども、その際に裁判官の言ったことは、私の出した準備書面、それから私の付けた東京高裁の判例は、当事者の合理的意思などを理由としてますねと。でも、その裁判官は自分でも調べてくれたらしくて、自分が調べてみたらこういうような判例もありました、こういう考え方はどうですか、みたいなことも。もちろん相手がいないところでですけれどね。私しか出頭してない中で、まあそういうヒントをくれたりして。で、書いてくれた判決が、これなんですけれども。「当裁判所の判断」というところで、26ページで、まあ、こういう判例があるのか無いのかよく知りませんけれども、私はこういう表現は初めて見ました。「当裁判所の判断」で、2のところで、読んでみますと、「被告は、本件取引は存在時期を異にする4つの個別の取引だから、各取引において発生した過払金は当然に充当されるものではない。したがって一連のものとして計算すべきではないと主張する。しかしながら、利息制限法は借主が実際に利用することが可能な貸付額、言い換えれば借りることによって実際に利益を受けることができる貸付額に対する利息の上限を定めたものと解される。」これが一つ。これ、よく読んでもちょっとわかりませんけどね。かなり飛躍したことを言っています。で、二つ目として、「一方、利息制限法所定の制限利率に基づいて引き直した結果、発生する過払金は、直ちに債務者に返還すべき性質のものである。」これが二つ。直ちに返還すべき性質のものである、なんていうことは、今までの判例の中であんまり見たことがなかったんですけれども、こういうことを言っています。それから3として、「債権者が過払金相当分を手元に留保したまま新たな金銭を貸し付けることは、債務者にとっては借り受ける必要のない金員に対してまで利息の支払いを強制されることになって、その利率が利息制限法所定の制限利率であった場合には、過払金相当分に対する利息の支払いは、利息制限法の『制限』に反するものになるといわざるを得ない。」ここ『制限』ってありますが、『趣旨』って直したほうがいいと思います。後の判例では「趣旨」に直ってます。つまり、「利息制限法の趣旨に反するものになるといわざるを得ない。」これ、わかり辛いですよね、ちょっとね。でもよーく読んでみると何となくわかってきます。「したがって一連計算すべき」だと。これは非常に簡単に簡潔に切り捨てちゃってるんですけれども、利息制限法ってのはそもそも、借主が実際に利用可能な貸付額についての利息の上限を定めたものだというのが一つ。で、一方利息制限法の制限超過利息を払った結果発生した過払金は、当然直ちに返さなきゃいけないものなんだっていうのがもう一つ。で、債権者が当然返さなきゃいけない過払金を手元に置いときながら、新たに50万とかって貸し付けることは、債務者にとっては、ほんとだったら20万借りりゃあいいものを、50万借りることになってしまって、結局借りる必要のない、例えばほんとは20万借りれればいいのに、30万余計に借りさせられちゃったということになれば、この30万円に対してまで利息の支払いを強制される。18%の利息の支払いを強制されるということになれば、それをつきつめて考えていけば、その30万円の部分に対する利息の支払いというのは利息制限法の趣旨に反するんだ。何となくわかりますかね。ずーっと10回ぐらい読んで、何となくわかってきたんですけれども。そういうことです。
えーっとだから、これは公平論、当事者の合理的意思っていうよりも、そもそも、そもそも利息制限法に反して過払金が生じている以上、当然一連計算すべきだっていうような判断。ちょっと乱暴な気もするんですけれども、まあ非常に明快な判断をしてくれています。
で、続いてその28ページの平成18年8月4日の判決は岡谷簡裁ですけれども、これも同じです。要は同じ。30ページのところですね。30ページの2行目から、「利息制限法は…」っていうところからです。ほとんど同じです。この30ページのほうが、この裁判官が後に書いた文章なので、ちょっと丁寧になっています。さっきの、例えば利息制限法の「制限」に反するっていうところが利息制限法の「趣旨」に反するって直してあったりとか、余計なところを削ってあったりとかして、この30ページのほうが文章としてはわかりやすいです。まあ同じことを言っている、ということです。
以上が最近の判例。で、今日付けたのはこの2つなんですが、私、今年になって6~7件判決を取ってますけれども、大事なのは、裁判官も最初はこんなに物分かりは良くなかったんです。最初の頃はけっこうちょっと、険悪な仲というか、言ってもわかってくれなくて、けっこうイライラさせられたりもしたんですけれども、毎日のように、毎日っていうのは大袈裟ですけれども、毎週のように裁判所に言って顔を合わせて、いろいろ話しをする中で、だんだんわかってくれるようになってきた。で、この判決に至っては、私が言ってないようなことまで書いてくれている、っていうことになるので、大事なのはたくさんやっぱり数をこなすということですね。数をこなしていくとだんだんわかってきます。で、裁判官の癖なんかも知った上で、戦っていく。で、変な裁判官で、変な判決書かれそうだなと思ったら無理しないで和解をするということも必要かもしれません。というようなことを思いました。一応私からの報告は以上です。
(了)
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