2016/08/26

裁判→司法書士という選択肢もある

 裁判をしなければいけなくなった、というときに、弁護士に相談しようとする人は多いけれど、司法書士に相談しようという人は非常に少ないように思います。
 こと、裁判手続きに関しては、司法書士は弁護士に比べると仕事の範囲が限定されているため、複雑な問題では弁護士に依頼したほうがよい場合が確かにあります。
 しかし、世の中には弁護士に依頼せずに自力で裁判を行おうとする人がかなり存在しています。このことは最高裁が毎年公表している司法統計上も明らかです。
 しかし、その人たちが、裁判所において適切な主張立証を行ったうえで納得のいく解決を得ているか、となるとどうでしょうか。少なくともこの点に関する統計はありませんが、日頃、いろんな方から相談にのったり、裁判を傍聴している中で感じるのは、かなりの方が、適切な主張立証ができないがために不当な結果に甘んじているのではないか、ということです。
 弁護士に依頼するのではないが、かといってすべて自力で行うのでもない、その中間的なところに位置するのが、司法書士に書類の作成を依頼して行う本人訴訟ということになるわけですが、残念ながら、そういう選択肢があるということ自体が、多くの人々に知られていないわけです。
 弁護士から仕事を奪おうということではさらさらなく、そもそも自力で裁判を行い、かえって不利益をこうむっているかもしれない、そういう人たちに、司法書士という選択肢もあるのだということを訴えていきたい。
 いったいどうすれば、裁判に関わらざるを得なくなった人たちに、私たち司法書士のことを知ってもらえるのか、これが今の私の最大の関心事です。

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2014/08/07

シリーズ本人訴訟 商工ローンと根保証 4

625ページが尋問事項。これもその主債務者の詳しい尋問事項になります。さっき申出のときには簡単な尋問事項を出してありましたけれど、より詳しいもの。通し番号で57まで質問事項がありますけれども、これは裁判所にもたしか出したと思います。本人の手控えという意味もありますけれど、裁判所にもたしか出したと思います。で、これは結局こっちは本人訴訟ですから、本人がやるわけですよね。本人が尋問するわけです。それで、尋問をしました。627ページ。そこに調書があります。平成15年2月12日の午後1時30分から証人尋問をしまして。で、リハーサルみたいなのもしましたね、やはり。
628ページからが、その私の依頼者の尋問がそのあたりです。中ほどに「被告」とありますが、そこからになります。そこから「陳述書4ページを示す」、とありますがそこから下になります。だーっとそのとおりのやりとりが速記録になっているわけですが。これまたお読みいただけると面白いと思うんですが。非常に堂々とやりました、本人が。この時点でもう裁判を始めて4年くらい経っていたんですね。だから裁判というものに慣れていたということもありますし、いろいろやはり本人がこの過程で勉強していったんだろうと思います。すごく弁護士のように堂々とやってくれたんですね、尋問を。アドリブなんかもけっこうきかせて。この尋問がけっこう良かったんだろうな、裁判官に与えた印象というのは良かったんだろうなと今でも思っています。これはまたお読みいただければと思います。「あなたは私を騙して保証人にさせたのですか。」とかってそのものズバリ聴いているのもありますが(笑)。そんなやりとりがあったと。
 632ページ。これは被告本人、保証人である本人の陳述書。本人尋問もしましたんで、被告本人の陳述書もこういう形で出しました。これはまたお読みいただけばと思います。
 636ページにありますのが、被告本人の尋問の調書になります。これは被告の本人尋問ですので、裁判官に聴いてもらったんですね。こっちが尋問事項を出しておいて、裁判官が質問をしてくれたと。この本人尋問はまああんまり、これは、という部分は無かったような気がしますね。なんといっても主債務者の尋問が大きかったと。ちょっと言い忘れましたけど、主債務者の尋問が良かったと言いましたが、一番良かった点というのが、これはアクシデントといってもいいんですが、さっき一日がかりで陳述書を作ったと言いましたが、そのときは本人が隠してたというか黙っていたことがあったんですよ。言いづらくて。というのは何かというと、保証人に頼んだ時点でその人はすでにSから1000万円以上借りていたんですね。だけどそんなものは無いと、今回借りる200万の他には借金は無いんだと言って頼んだわけです。それが第三者詐欺だと私達は主張していたわけなんですが、ポイントは、それを相手方たるSが知っていた場合じゃないと駄目なわけです。そうすると、そういうふうに主債務者が保証人を騙したということをSの社員が知っていたんだということを立証できないと勝てないわけです。で、それはその陳述書を作る過程では、例えばSの社員に自分が1000万の負債があることは言わないでくれよというふうに頼んだという事実でもあれば、知っていたというふうに言えるかと思いますが、その当時は、そういう事実は無い、みたいなことを言っていたんですよ。陳述書を作った段階では。だから陳述書にもそういう記載は出てこないわけです。ところが、証人尋問の当日の朝早く弁護士の事務所に集まってリハーサルというか打ち合せをしているときに、「実は今まで黙ってたけど…」みたいなことを言い出したわけです。「実はあのときSの社員にそういうふうに頼んだんだ」と。黙っていてくれと。そんなことをその日になって言い出したわけです。そういうことを、尋問の中で、なんであなたは陳述書にはそういうことが書いてないんだけど、陳述書を作るときにそういうことを黙っていたんですかということを、これは本人が聞いたんじゃないですけど、もう一人のこちらについた弁護士がそういう質問をしたりして、その当時自分が詐欺罪で訴えられるんじゃないかとか、そういうことを恐れていたとか、そんなことも言ったりして。そういうちょっと予想外の展開というのも確かにありました。
 そういう尋問を終わりまして、640ページを見ていただきますと、準備書面(7)。抗弁の整理は一応済んでいますが、証人尋問の結果、こういうことが明らかになったんだという意味で、出したんですね。第三者による詐欺がいっそう明らかになったと。既存債務が1000万円以上あったにもかかわらず、これをわざと告げなかっただけじゃなくて、原告の社員にもそれを被告に言わないでほしいと頼んだ。まさにこれで第三者の詐欺と相手方の悪意が立証できたんだろうということを付け加えたということですね。
 それで、640ページの右側の部分の信義則違反、公序良俗違反。ここです。この頃、平成15年11月17日、東京地裁で原告の訴えを却下する判決が出たと。これが一番最初に言いました、手形訴訟の濫用だという判断。私が一番最初の準備書面で書いたのと似たような判断をしたのがこの判決です。その判決が642ページからつけてあります。645ページの二行目辺りからちょっと読みますと、「仮に根保証契約がその約定どおり有効であるとしても、根保証限度額は保証人の保証責任の範囲の上限を画するに過ぎず、保証人において同金額の支払い義務が当然にあるものでないことは明らか。かつ無条件に同金額を払うべきものでもないことも明らか。仮に保証人において根保証をしたこと及び私製手形の振り出しをしたことを理解していたとしても、私製手形の記載は保証人の真意に沿わないと言わざるを得ない」ということ。
 645ページの右の方の段落が変わった辺りから、「手形訴訟制度が証拠制限をし、簡易迅速に債務名義を取得させることとしているのは手形の信用を高め、流通を促進するためにその簡易迅速な金銭化が強く要請されるからであるところ、私製手形が手形の信用と流通とは無縁のものであることは以上の認定から明らか。以上認定したところをあわせて考慮すると、原告が使用する私製手形は手形訴訟を利用するために手形制度を濫用しているものというべきで、このような私製手形による原告の提起する手形訴訟は手形訴訟制度を濫用したものというべきである」と。これ、私が一番最初に書いたこととほとんど同じようなことを言ってくれてますよね。こういう判断をして、結局Sによる手形訴訟は不適法だといって却下した判決なんです。これも証拠として当然つけまして、647ページと648ページを見てください。これが最後に出した準備書面になるのかな。
 647ページと648ページはほとんど同じ準備書面なんですが、これは実を言いますと、もう一人別の保証人についている弁護士さんがいると言いましたが、その人が親切にこういうのを出せとFAXしてくれたものです。自分のところでも同じものをも出すからと。今の東京地裁の判決を受けてこういうのを出すと。で、647と648の違いはですね、ほとんど内容は同じなんですが、647ページのほうは最後のほうを見ていただきますと、不適法却下を求めるとなっていますね。ところが648ページの最後のほうを見ていただきますと、棄却されるべきだと述べています。却下じゃ意味無いんで、棄却にしようということで、急きょ出しなおしたわけですね。
 その後は、言って見ればこのあたりでもう勝負あったみたいな感じだったと思うんですけどね、今思えば。その後原告側の準備書面がいくつか出てきてますが、もうこちらからは何も出してません。ここから先は。
 それで、ちょっと面白いことを言っておきますと、652ページを見てください。これは原告側が出してきた準備書面なんですけど。時機に遅れた攻撃防御方法ということで、「被告らから、本件訴訟における手形について、手形ではないという主張がされた。これは時機に遅れた攻撃防御方法として許されない。」と。まあ確かに気持ちはわかりますが。理由も書いてあります。その後、654ページ。平成16年5月。だいぶ最近ですね。請求の趣旨変更。原告は請求の趣旨を下記のとおり変更すると。手形訴訟の段階では500万及び9月1日から年6パーセントの割合による損害金を求めるとされていたわけですけど、これが、29.2パーセントの割合による損害金を求めるというふうに変えて、請求原因も、保証債務の請求原因として改めて出してきたという意味だと思うんですが、何が面白いかと言いますと、口頭弁論で、この変更の申立てが出てきたときに、裁判官が、「うーん。これは時機に遅れた攻撃防御方法として却下します。」と言ったんですよ(笑)。
 それで、ここで弁論が終結になったんですね。それで、最終的には和解になったんですが。結論から言いますと、裁判上の和解が成立しました。和解条項を見てください。
 「1 被告は原告に対し、当庁○号の手形判決の強制執行に基づいてすでに支払った30万円のほか、本件和解金として20万の支払い義務を認める」と。他は一切債権債務なしと。こういう和解になったわけです。それで、その30万というのは何かと言いますと、言い忘れましたが、仮差押されていた定期預金の30万があったんですが、それは訴訟の過程で本差押されて、回収されてしまったわけです。で、まあ執行停止を求めるとかもいろいろあったんでしょうけど、まあなんていうんでしょうか、もうあえてやらなかったわけです。最終的に0を目指してはいましたけれども、その当時それどころではなかったと言うか、必死でやってたみたいなところがあって、30万は回収されてしまってあって、プラス、裁判所の和解の席上で20万払って、全部で50万払って和解したことになったわけです。だから、解決のレベルとしては、500万払えと言われていたものが、50万で済んだということになったということです。一件落着にはなったわけです。
 付け加えますと、弁論が終結して、そのときの裁判官の心証が開示されていたということもあったんでが、和解を蹴って、判決を求めていたら、断言はできないですが、勝訴判決がもらえただろうと思います。もう一人の保証人についていた弁護士さんもそう言っていました。これたぶん勝つよと。だけど、なんで和解したかというと、控訴してくるだろうと。そうすると東京高裁に行っちゃうもんですから、本人がもう5年もかけて、このうえ高裁で、ということになると、そこまではちょっと、ということがあって、まあ50万円で済むならということで、最終的に手を打ったと、そういう経緯があります。
 そういうことで解決したんですけれど、いろんな問題を含んでいるだろうなと思います。公正証書の問題とも通じるものがあると思います。知らないうちに取られていたとか。こういう裁判というものが今後出てくるかどうかというとわかりませんけど、まあこの資料を捨てないでとっておいていただいて、もし何かのときに役に立てば幸いです。
 言い忘れました。報酬ですけど、50万円くらいはもらいました。いろいろ実費とかは抜きにして、高速道路代とか、それはもちろん別にもらいましたが、純粋な報酬としてはだいたい50万くらい、最後にもらいました。一番最後に。喜んで払ってくれましたけど(笑)。いろいろ勉強させてもらってよかったなってことと、でも、次に同じような相談がきたらたぶん弁護士のところに頼んだほうがいいよと言うかな、という正直なところはありますけれど(爆笑)。まあそんな感じです。一応私からの話しは以上です。質問がもしあればどうぞ。

(会場)当時利息制限法に引き直すといくら残っていたんですか?
(小口)440万あまりだったと思います。もう一人の根保証人がいるっていいましたが、その人は300万の根保証で訴えられていたんですよ。こっちは500万。あわせて800万になります。利息制限法で引き直した金額が440万あまり。で、最終的にどうなったかといいますと、こちらの保証人が50万、もう一人の保証人も50万払って和解と、そうなりました、たしか。
(会場)これはやはり併合されてたわけですか?
(小口)これは、併合ではなかったと思うんですよ。事実上の併合というか、事実上いっしょにやってましたけど。
(会場)本人の満足度っていうのはいかがでしたか?
(小口)かなり満足してくれたんだろうとは思っています。毎回野菜を持ってきてくれて(笑)。
(会場)50万プラス野菜ってことですね(笑)。
(小口)うーん ・・・(笑)
                      以上

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シリーズ本人訴訟 商工ローンと根保証 3

この時点でもう1年くらい経っていたでしょうか、訴訟が提起されて。で、この間ですね、いろいろとやはり手こずってというか、うまくいかないというか、592ページを見ていただきますと苦労したっていう軌跡がわかると思うんですけれど。「寒くなってまいりましたがお元気ですか(笑)。」これ、依頼者、相談者に出した、すごく気を使って送ったものなんですけど。なんでこんなのを出したかって言いますと、すっぽかされちゃったんですよ、打ち合せの日を。本人も、非常にこの時点では迷いがあったと思うんですよ。こんな裁判やってて、先が見えないし、勝つか負けるかもわからない。こうやって打ち合わせの日を入れたのに来れなかったというのは、まあ理由は風邪引いたのか何かわかりませんけれど、結局、来てくれなかったと。でも乗りかかった船ですから途中で辞めるわけにいかないもので、親切にこういういろんな質問事項を添えて、書いてFAXしてくださいみたいなことをやって。で一応FAXしてくれました。途中こういう時期もあったということですね。毎回毎回本人も出ていかなければいけないということですから。
 594ページが原告準備書面。相手の準備書面ですね。これもいいでしょう、いろいろごちゃごちゃ書いてありますけれども。まあこの5年間というのは結局、こういう準備書面の攻防だったということですね。わけのわからないようなやりとり(笑)。
 そうしてたところがですね、元気付けられた出来事というのが、596ページ。ここで画期的な判決が出たんですよ。東京高裁の。新聞記事がそこにありますけれども。平成13年2月21日付けの新聞記事で、「Sの根保証の説明不十分」と。「東京高裁が無効の判断」「公序良俗に反する」。公序良俗違反だと言ったんですね。これがすごく画期的な判断で、これによってうんと元気が出てきたというのがあります。で、ちょっとその中のポイントだけ触れますと、「○○裁判長は、書類上は根保証契約は成立しているとした上で、同社の根保証制度の利用の仕方について、保証人への説明を不明確にする道具として使っている疑いが濃厚、と指摘。法の弱点を逆手にとって、自己の不法な利益を図ろうとするものであり、実質上公序良俗に反する、と根保証契約を無効とする判断を示した」と。こんな判断というのはたぶん初めてだったろうと思うんですね。それで、一番下の段にSの話しというのが載ってまして、「ニーズに対して必要なときに、必要な額を迅速に提供するのが根保証制度だ。この判決については今後法廷で主張したい。」ということで、まあ争うみたいなことを言っているわけですね。
 それで、この判決が出たもんですから、さっそくこれを証拠として提出すると同時に、これを引っ張ってきて、準備書面を出したのが597ページ。準備書面(4)というやつです。
 599ページあたりからかな。本件の争点について。これは、もう訴訟がこの時点で1年半くらい経っちゃってますので、もう一回整理するつもりで、「本件の争点を確認する」ということで、①から⑥。今まで被告はこういう抗弁を出してますよということをやったうえで、「(2)公序良俗違反」。これが今の東京高裁の判決をもとに、追加した抗弁ということになるのかな。追加して主張をしました。本件における手形訴訟の提起及び根保証契約の利用は公序良俗に反するという主張をここで追加しました。
 で、あとはだーっと見ていただければいいと思いますが、この頃になりますとけっこう各地で判例が出てきてまして、それが601ページ。①から⑮くらいまで。こういう根保証を巡る判例というのが出てきて、これをだいたいこうざっと見ていただきますとですね、この事件と同じように、200万のつもりで500万の根保証をしたっていう場合に、責任は200万までであるという、保証人が認識していた額までに制限すべきだっていう判断はたくさん出てきているんです。この時点で。それで、今の東京高裁はもう公序良俗違反ですから、全部無効で、まあ言って見れば0ですね。そういう判断というのはまだこの時点では少ないです。それが唯一くらいの。もう一つくらいありましたけど。だから、対策弁護団がこうやって集計している判例の中でも、せいぜい500が200になったというくらいの判断。それがやっぱり多かったわけです。で、しかもそれだけじゃなくてもちろん負け判決もいっぱいあったと思うんですよ。そっちのほうがむしろ多かったと思うんですけど。そういう、まあだんだんと、債務者側の主張を認める判例が出てきたというのがこの頃です。そういうものもいろいろ主張していきながら、争っていったんですね。
 それで603ページは向こうの準備書面。これはどうってことないんで飛ばして。
 605ページを見てください。証拠申出書。これは結局こっちは錯誤とか詐欺とか言ってますので、それはこっちが立証しなければなりませんので、そのためには証人尋問をやるしかないということで、605ページの証人尋問の申出。証人の表示。ここにあるのは主債務者です。友人である主債務者を証人として。それから本人尋問の申出というのも同一書面でしてまして、こっちは相談者自身、保証人自身ですね。この二人をいちおう尋問の申出をしたと。606ページでそれぞれ尋問事項も、まあこの時点では簡単なものです。こんなようなことを聞きますと。
 で、実際に尋問することになったのはここからだいぶ先です。争点整理にものすごく時間がかかったので、申出はまずしましたけど、実際に尋問をしたのはまだだいぶ先のことになりました。
 それで、607ページに証拠説明書。これは当時「Sを斬る」という本が出まして、非常にいい内容が書いてあったんで、これも証拠としてつけたと。本のコピー、全頁をコピーするわけにいきませんので、裁判官との話しで、表紙と一番最後のページだけ写しとして付けてくれればいいですよということで、608ページ、609ページが裁判所に出した部分ということになります。この本の中にいろんなSの手口、知らない間に手形にサインさせてるとか、公正証書の問題もこの本の中に触れてあります。
 それから612ページを見てください。「対S訴訟における抗弁の整理」これは私が勝手に作ったんですけれども、何のために作ったかといいますと、本人に理解してもらうために作ったものです。事務所に呼んで。で、なんでこんなものが必要になったかといいますと、この頃、裁判官がですね、結局その…、裁判官が何もしないんですよ。いつも黙ってこう、ふんふんとか言ってニコニコして聞いているだけで。ラウンドテーブルについて、私の依頼人の被告本人、それからもう一人の保証人についている弁護士、それから相手の弁護士、それから裁判官というふうに一つのテーブルでそういう形でずっとやっていったんですけれど。そうすると、依頼者本人はだいたい黙って座っているしかできなかったんですけれども。もう一人の保証人についている弁護士と、相手の弁護士が、けっこう弁護士同士ですからいろいろ言い合うわけです。毎回毎回。裁判官は黙ってこう「うーん」とかやってるだけで(笑)。で、その意味では本人は座ってりゃあいいだけだったもんで、私の依頼人は。そこまでは何とかなってたんです。ところがですね、この辺りから、裁判官がやっとその、争点を整理する気になったらしくて、本人にもいろいろこう質問をするようになったんですね。このあたりから。で、いろいろ難しいことを聞くんですよ。例えば、「錯誤の主張をしているようだけど、どの部分が錯誤なの?」とかって本人に聞くんだけど(笑)、そんなこと本人に説明できるわけがなくて、書面では出してあるつもりなんですけどね。で、これは困っちゃったなあということで。本人にもちょっと勉強してもらおうと思って、こういう私なりにわかりやすい言葉で書いて、これを見ながら本人と勉強会みたいなことをしたのが、この資料です。何をもって錯誤って言ってるんだよ、とか、詐欺、第三者詐欺ってのはこのことを言ってんだとかね。裁判官からこう聞かれたらこういうふうに答えればいいんじゃないの、みたいなそういうことを、やりとりをしたのがこの部分です。また興味があったら目を通してみてください。614ページにあるのはこれもそのときに本人に説明するためにつけたものですが、これは私が受験時代に使った民法の総則の基本書の中のコピーなんですけれど、第三者詐欺について触れられていて、真ん中へんに図があるんですが、まさに第三者詐欺っていうのは、こういう教科書なんかでも紹介されている事例として、保証人が主債務者から騙されて保証人になったというのが第三者詐欺の代表的なケースとして教科書にも紹介されているんですよね。こういうものも本人にコピーを渡したりして理解してもらったということです。
 それから先へいきまして615ページ。準備書面(5)。このあたりから、ほんとの意味の争点整理。今まで準備書面の中でいろいろと雑多な主張をしていましたが、結局抗弁として主張しているのはどこなんだよということを、このあたりから整理して、絞っていきながら、不要なものは省いていきましょうというような話しにだんだんなっていったんですね。
 616ページもちょっと説明しときます。公序良俗違反の抗弁の補足。この右側にある「報告書」というものですが、これはですね、Sが今回仮差押をしているんですけれど、仮差押の申立てをしたときにSが裁判所に出した報告書、これを裁判所に行って閲覧謄写してきたものなんですけれど、この中でですね、五あたりかな、「債務者○○は○○村で農業を営んでいます。債権者は特別な調査機関を持っていませんので、契約時に債務者から資産について聴き取りをしましたところ、不動産は父親名義であり所持していない、○○農業協同組合に預貯金口座を持っているとのことでした。」そんなような記載があるわけです。契約時にそういうふうに債務者が言ったっていっているわけですが、こんなのは真っ赤な嘘なわけです。本人に聞いてもそんなこと全然聴かれもしなかったし言ってもいない。ですから、Sはあてずっぽみたいにやるわけです仮差を、あるだろうということで。だからこういう嘘の報告書を堂々と出してるんだということを、この616ページの公序良俗違反の抗弁の補足というところで、言っているんですね。直接は関係ないですけれど、でも、こんな嘘の報告書で仮差しといて、しかも手形訴訟でやってきて、こういうやり口っていうのは公序良俗違反なんじゃないのという、そういう意味で出してあるものなんですね。
 それから、617ページが準備書面(6)。これは本当にもう争点の絞込みになってきて、見ていただきますとですね、被告の主張を以下整理する。で、手形行為の錯誤というのは撤回しました。いろんなやりとりがあったんですが、裁判官との話とか、弁護士との話し。で、手形行為の詐欺というのも撤回してます。結局主張として厳しいだろうということなんですね。こっちでいっしょにやってた弁護士さんとの話しでも、それちょっと厳しいだろうと。むしろ原因関係に絞ってやってったほうがいいだろうということで、手形行為についての錯誤、詐欺というのはここで撤回しました。まあそれが良かったか悪かったかはわかりませんが。で、錯誤についてはもうちょっと整理をして、詐欺についてももうちょっと整理をして、というような。これは、最終準備書面ではないですけれど、最終的な整理した結果の書面がこれということになるんですね。
 618ページは同じように原告側のそういう整理するための準備書面ということになります。
 620ページを見てください。陳述書。いよいよ証人尋問をそろそろやろうかという話しになってきたわけですね。620ページの陳述書は主債務者、友人である主債務者の陳述書です。で、これはだいぶ分量もありますけれど。これはちょっと余計な話しなんですけれど、すごく苦労した点というのが、この主債務者がですね、実は、ほんとにその変なところから金をいっぱい借りて、逃げ回ってた人なんですよ。はっきりいってヤクザにも追われているというような、隠れて暮らしているような人だったんですね。で、ほんとにそれこそ、当時県外にいたんですね。それで、陳述書を作るために、なにしろ時間を作ってくれと言って、もう一人保証人がいて弁護士がついていると言いましたが、その弁護士さんの事務所へ呼んで、まあ同じ主債務者に頼まれている者同士ですから、こっちの保証人、向こうの保証人、この主債務者含め、皆でその弁護士さんの事務所に集まって、集中的に陳述書作りをやったんです。丸一日かかりました。朝から夜まで。パソコンで聴きながらカチャカチャ打って。そういう苦労もしました。そういうふうにして苦労して陳述書を作って出しました。
(つづく)

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シリーズ本人訴訟 商工ローンと根保証 2

そうすると結局、強制執行されちゃって、まあこのままにしといたらそれまでですので、その後何をしたかと言いますと、558ページで異議申立ということをしたわけです。おそらくご存知だと思いますけれど、手形判決に対しては異議の申立てができると。異議の申立てをすると、今度はそこからは通常の訴訟手続きで審理されていくことになります。ですので、手形訴訟の中ではいろいろ言えなかったこととか、立証ができなかったことも、通常訴訟になれば、一応言いたいことは言えるということがありました。ですので、とにかくどうなるかはわかりませんが、異議を出して争おうということになりました。
 558ページの左のほうに期日呼出状がありまして、左上に事件番号がありますが、今までは(手ワ)という手形訴訟の番号だったのが、ここから先は平成11年(ワ)第○○号というふうに事件番号も変わって通常訴訟に移っていったということです。
 559ページの警告書。これはさっき説明したものですので飛ばしまして…
 560ページを見てください。準備書面。ここからが言ってみれば本番というか、ここから本格的な戦いが始まっていったということです。
 これは当時縦書きの準備書面で、ごちゃごちゃ書いてあるんですけれども、30ページ近い準備書面を提出したわけです。ここには本当にいろいろごちゃごちゃ書きました。事情説明から始まって。興味があれば後でお読みいただければと思います。ポイントだけ言っておきますと、まあ結局この書面が基本になります。最初の段階で言いたいことをほとんど全部言いました。後はここからそぎ落としていったような感じになります。最初に言える抗弁は全部言っておこうという感じです。
 まず560ページで、「第1 本案前の申立て」というのがあるんですが、ここはあまり今日の話とは関係がないものですから、ちょっと端折りたいと思うんですけれども、簡単に言いますと、支配人訴訟は駄目だよということも一応言っているわけです。Sの場合、実質的な支配人とは言えないということです。支配人というのはそれだけの権限があって、だからこそ訴訟代理権を認めるんだということなんですけれども、Sの場合は、訴訟をやるためだけに支配人の登記をして、訴訟を濫発しているということがあったんで、それは、訴訟代理権が無いよと。だから却下してくれということになるわけです。
 562ページ。「第2 請求の原因に対する認否 本案について」。ここからですね。ここからが請求原因に対する話しになります。この時点で言った抗弁というのがいくつかありまして、最初に事情についてだーっと書きまして、こういう事情で訴訟になったんですよということを書いていって、565ページを見てください。ここら辺りからが抗弁の話しになっています。
 まず、「2 被告の手形行為の有効性について」という見出しがあって、その中で言っていることは、錯誤。ややこしいんですけれども「手形の振出し」という行為自体が錯誤だという主張をまずしました。まず第一に。566ページの最後の行のところに民法95条によって本件手形の振出しは無効だと、これがまず第一の抗弁事由として主張したことです。
 次が、「3 手形行為の取消し」という部分で、仮に、右手形行為が有効であったとしても、取り消すことができるんだ。よって取り消すということを書きまして、それが民法96条1項の詐欺による取消し。この詐欺というのはSの社員の詐欺によって手形を振り出したんだという主張になっています。これが二番目の抗弁事由です。
 三番目が567ページからなんですが、これちょっとややこしいんですが、原因関係。今の二つは原因関係の話しではなくて、手形行為自体が錯誤であり、詐欺であるということをまず言ったんですけれど、今度はそうじゃなくて、原因関係について問題があるという話です。
 まず言っているのは原因関係たる保証契約が無効だというのが第一点。それから568ページで、仮に有効だとしても、詐欺により取り消す。保証契約を取り消すということです。さっきは手形の振り出しという行為を取り消すということだったんですが、今度は保証契約を取り消すということです。ここで気をつけていただきたいのは、ここでは第三者詐欺を言っているわけです。第三者とは誰かというと、主債務者です。友人のことです。頼んできた友人が、調子のいいことを言って騙したんだと。だから相手方であるSとの間で保証契約を締結してしまったんだと。第三者詐欺の場合は相手方がそれを知りたるときに限り取り消すことができるとなっていますけれども、そういう主張をしています。
 で、それだけでなくて相手方の詐欺もあったんだと。だから相手方の詐欺によっても取り消すと、両方言っています。最終的には第三者詐欺に一番力を入れて絞っていったんですけれども。
その後、570ページで、最後に信義則の主張をしていて、以上のすべての抗弁が仮に認められないとしても、ということで、何を言っているかというと、571ページを見てください。この辺に書いたことは自分のオリジナルなわけですが、自分を評価したいと思うのは(笑)、一番最後のほうに判例がついているんですけれども。結局最終的に解決がついた経緯になった東京地裁の判例の中で、私がここで言っていることと同じような判断をしてくれています。その意味ではこの当時いいことを書いたなという気がしています(笑)。
 どの辺かと言いますと、571ページの一行目あたりからちょっと読みますと、「しかも本件における約束手形は、通常使われる統一手形用紙を用いたものではなく、原告独自の様式による一覧払いのものであって、手形交換所における決済を予定しておらず、流通を予定したものというよりもむしろ、簡易迅速に債務名義を取得することができる手形訴訟を提起することを主たる目的としていると考えられるから、通常の手形におけるような、所持人の利益保護(動的安全)よりも、むしろ振出人の保護(静的安全)を重視すべきである(これは勝手に書いたんですけれども(笑))。通常の手形行為がもっぱら手形上の記載だけを斟酌して手形債務の内容を判断することとされているのに対して、本件のような流通に置かれることを予定していない手形においては必ずしもそのように解する必要はないと考えられる」なんていうことを書きました。それから、もうちょっと左のほうにいきまして、「これは手形訴訟の濫用、ひいては手形制度の濫用という他ない」ということも書きました。で、「本件においては200万のつもりだったんだから、500万の請求を受けることが寝耳に水だったんだ。少なくとも200万に制限されるべきだ」ということです。
 今読んだのと似たような文章が最終的に平成15年11月に東京地裁で出た判断でも述べられています。
これが最初に出した準備書面です。ここから始まっていったと。
で、手書きのメモみたいなもの。574ページ。これは本人にちょっと思い出して書いてきてもらったもの。なかなかいいことを書いてきてくれたので、これも証拠としてつけていきました。こういう事情で保証人になったんだよということ。
 それで、おもしろいのが575ページの取下書。なんで取り下げてきたのかはわからないんですけれども、Sが取り下げてきたわけです。この長ったらしい準備書面を出したところ。本当に理由はわかりませんけれども、支配人だから駄目だよということを言いましたから、ここで一回取り下げて、改めて弁護士をつけて出してくるのかなという感覚もあったり、よくわかりませんでしたが。ただ、結局取り下げられても何の解決にもならないものですから、駄目だよということで、異議申立書を出して、取下げには同意しないとやったわけです。もう、一度裁判を起こしてきたんだから、ここで決着つけましょうよと。じゃあなんで却下を求めたのか(笑)という話しもあるんですけど。これにはいろいろと事情がありまして。本人にとってみれば、どうでもよかったわけです。別に支配人が起こしてこようが、弁護士つけてこようが、結局内容の解決を図りたいというのが本人の気持ちだったわけです。実を言いますと、もう一人保証人がいまして、時期を同じくしてそのもう一人の保証人も訴えられていまして、その保証人は弁護士のところへ行ったんですね。その人はその弁護士に依頼してやっていったんですけれども、私のところの依頼人は本人訴訟でやっていったと。その結果変則的な併合みたいな形になったわけです。同じ裁判所で完全な併合ではなかったんですが、同時進行で、同じ期日に進めていくことになったわけです。支配人にあたらないから却下せよというのは、そのもう一人の弁護士さんというのが、日栄商工ファンド対策弁護団の一員の弁護士さんで、これは争わなければいけない部分だということになりまして、じゃあ足並み合わせてやっていきましょうということで、本案前の抗弁も出したわけです。そうしたところ、Sが取下げてきたわけですけれども、取下げは駄目だと、ちゃんと決着をつけようということで、こういうふうになったということです。
 それで、取下げに同意しないということで、改めて呼出が来まして、期日が指定されて、それで577ページを見てください。ここで、Sが弁護士をつけてきたと。それまでは支配人がやっていたんですけど。途中から弁護士をつけてきたわけです。この弁護士さんは東京の方で、毎回新幹線で来ていました。長野の地裁まで。ご苦労様だなあと思ったんですけど。これは全然余談になりますけど、最初はその弁護士さんはSの弁護士として、確かにやっていました。途中から嫌になったのか、嫌々来ているのがわかるようになって、廊下で立ち話などをしていると、Sの文句ばかり、愚痴られるようになりまして、もう辞めたいんですよとか(笑)。途中からそんなふうになっていったということもあります。
 それで、ここにある原告の準備書面は支配人の主張に対する反論ですのでとばしまして、581ページ。準備書面2。ここも支配人についてのやり取りになりますのでとばします。
 583ページを見てください。訴訟進行に関する意見書というタイトルの書面。これを出したんですが。これは出しても出さなくてもよかったのかもしれませんが、一応言っておいたほうがいいだろうということで出しました。擬制自白というのは、向こうが訴えを起こしてきておいて、弁論に出てこなかったことがあったんですよ。準備書面も何も出さずに。だから、そっちが裁判を起こしてきておきながら、誠実じゃないじゃないですかというような。請求原因とはあまり関係がないことですので、意見書という形で出したのと、裁判所が遠いので回付申請もしているんですよと。それなのに裁判に出てこないというのはあんまりじゃないですかということです。これが意味があったかどうかはわかりませんが、こういうのも一応出したりしました。
 585ページ、586ページは相手がポンと甲号証だけ出してきたものです。これと同じ契約書の控えは本人も持っていました。たしかに本人の直筆でサインがしてあるというものです。これがなぜ甲号証で出てきたかといいますと、さっきまでは手形訴訟でしたから、必要ないわけですよね。通常訴訟になってこちらも争うということになったので、その時点で裁判所がSに対して、手形だけでなく、原因関係の主張もしなさいと。原因関係の主張・立証も求めてきたわけです。それでこういう甲3号証、4号証みたいなものが出てきたと。
 で、587ページの準備書面も支配人に関する主張ですので飛ばしまして。
 590ページ。これは相手の準備書面ですね。原告の。ここで相手の原因関係についての主張が初めて出てきたんですね。今までは手形を振り出したというだけだったんですけど。で、これ読んでいただくと感じると思うんですけれど、やり気があまり無いんですよね、この弁護士も。この文章も変な文章で何を言っているのかわからないというような。いろいろと書き込みも、これ私の書き込みですけど、「?」とかいっぱいあって、何言ってるのかよくわからないっていう。こういうのが出てきました。とにかく500万という枠があることを知って、それでもかまわないからサインしてるんでしょうみたいな、そのくらいのものですね。
(つづく)

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シリーズ本人訴訟 商工ローンと根保証 1


司法書士クレサラシンポジウム 分科会「商工ローンと公正証書問題」より
「商工ローンと根保証問題」~本人訴訟で闘った5年間~
平成16年10月3日 於:ホテル札幌サンプラザ

 長野の小口といいます。よろしくお願いします。この分科会のタイトルが「商工ローンと公正証書問題」ということなんですけれども、前半で私のほうで、直接公正証書の話ということではないんですが、関連はしています。なぜ関連しているかという話しもしたいと思うんですけれども。
 私のほうの話は、資料がですね、533ページから、659ページまでで、これたぶん一番多いと思うんです。資料だけは一番多いんですけれど(笑)。これすべてですね、5年かかって本人訴訟で解決したという事件です。相手はSという商工ローン業者。要するに保証人になった人が相談に来て、簡単に言いますとその人は友達に頼まれて保証人になったんですけれど、そのときの話では200万借りるからということで、保証人をしぶしぶ引き受けた。ですけれど、それから1年くらいして、とつぜんSから請求がきまして、500万払えという内容証明がきてびっくりしたと。500万なんていう保証は自分はしたつもりはない、というところがまずきっかけです。
 それが、もう平成11年6月の話しになるんですけれど、その当時、商工ローン問題というのはそれほど問題になっていませんで、どういうふうにやっていったらいいかというのも、情報もあまりなくて、いろいろ模索しながらやっていって、途中いろんなことがありまして、いろんなタイミングとか、いろんな判例が出たりとか、日栄・商工ファンド対策弁護団というものが結成されて、そういう研究会に出たりしながら情報を得ながらなんとかかんとかやっていって最終的にはそれなりの解決ができたという、まあ苦労話みたいにことになっちゃうんですけれど。
 最初に見ていただきたいのが、559ページです。これからお話することがなんで公正証書問題というものと関連してくるかという話しなんですけれども。この左側が「厳重警告書」となっていまして、これはある弁護士会からS宛に警告がなされていると。その警告の内容というのが、Sという会社は弁護士を立てずに、自分の会社の支配人に訴訟を担当させて、全国各地の裁判所に多数の手形訴訟を起こしており、弁護士法の問題があるということで、警告書を送っているわけです。それに対するSの回答、改善計画というのが右側にありまして、この中をみていただきますと、(2)のところを見ていただきますと、「訴訟の削減の一層の推進を行います。すでに取り組みを開始していることでありますが、債務名義の取得について、公正証書等を活用することを一層推進し、訴訟そのものの発生を抑止してまいります。」という、こんなものが当時、こんなやりとりがあったと。で、その後しばらくはSは今日お話しする手形訴訟というものを非常に使って債権の回収をはかって、それが、今日のお話の最後に出てくるんですけれども、Sの手形訴訟というものは、もう、言ってみれば認めないというような傾向にはなってきているわけです。その理由というのはまた説明しますけれど。
 で、それにとって代わってといいますか、非常にここにも書いてあるように、今度はそれが駄目なら公正証書を使おうというような、流れにどうもあるような気がします。ですので、公正証書の問題の前段階というか、前提としてこういう問題があったという、そういうふうな認識で聞いていただければと思います。
 直接は手形訴訟ということなんですけれども。なんで手形訴訟なのかという話しもしたいと思います。保証人に対する請求なものですから、通常は保証債務履行請求ということになるはずなんですけれども、なぜか手形訴訟ということなんです。で、結論から言いますと、手形訴訟は、もう裁判所としては、Sについてはこの手形訴訟は認めないと、門前払いするというような流れに最近はなってきています。ですが、それで解決したわけではなくて、手形訴訟という形式では認めないけれど、普通の保証債務の履行を請求する裁判というのはこれからもあるでしょうし、そういう意味ではすべて解決したというわけではないということです。ですので、手形訴訟云々という話しよりも、なぜこの人は200万のつもりでサインしたんだけど、500万の請求を受けることになったのか。結論から言っちゃいますと、この裁判は、正直言って500万が200万になればしめたものだという感覚でやっていました。200万になればいいだろうと。結果的には50万払って和解ということで、勝訴的な和解をすることができたんですけれども。そういういろいろな問題点の中で、どういうふうにして訴訟が進んでいったかというようなお話になるかと思います。
 では資料に戻っていただきまして、534ページから、資料を見ながらお話ししていきたいと思います。この資料は、なるべく順序どおりに綴ってあるものですから、後でじっくりお読みいただければ、イメージはつかんでいただけると思います。
 534ページに通知書というものがありますが、これがきっかけになります。この内容証明が、保証人にされた本人のところに届いた。ここに書いてありますように、後記債務を即時一括して返済していただかなくてはならなくなりましたと。後記債務というのが一番左端に書いてありまして、「○○様連帯根保証限度額金五百万円」ということです。ですので、500万を一括で払えという請求が来てびっくりしたというところが始まりになります。
 で、536頁を見ていただきますと、仮差押決定とあるんですけれど。この仮差が来るまでにだいたいひと月くらい経っているんですけれど、その間、相談を受けまして、どうしたらいいかわからず、聞いてみましたら、他にも保証人が6人も7人もいるらしいということがわかりまして、そうすると他の保証人が払ってしまう可能性もあるので、ちょっと様子を見るしかないね、というような話しだったんです最初は。ところが、そんなことをやってましたら、一ヶ月くらいして仮差押がされまして、何を押さえられたかと言いますと、見ていただくとわかりますが、農協の定期預金です。この人農家の息子で、当時20代のまだ若い息子さんだったんですけれど、お父さんの農業を手伝っているということで、給料を押さえられるというおそれはなかったんですが、農協の預金を仮差押されてしまったということで、このままにしておけないなということになったわけです。
 続いて540ページを見ていただきますと、平成11年8月付けでまた通知がきまして、仮差押をさせていただきましたと。原則的には根保証500万一括ですよというような、圧力がかけられてきたということです。
 この間、私も非常にどうしたらいいか悩んで、いろんな人に聞いたりとか、弁護士の知っている人に相談したりとかしながら、司法書士の仲間にももちろん相談して、とりあえず調停を申し立てるしかないんじゃないかと。今は特定調停というものがありますけれど、この当時はまだ特定調停というものが制度として無くて、通常の民事調停の申立てをして、一括は無理ですから、債務額を確定してもらって、本当に払わなければならない債務があるのなら、分割で払っていこうというような調停をやっていくしかないだろうということで、541ページにありますように、当時はまだ縦書きでしたけれど、債務弁済調停の申立てをしたと。この内容はどうということもなくて、普通に利息制限法で引き直して、その後の金額を3年程度で分割払いにしたいという内容です。このときは500万を200万に、というところまで目指していたわけではなくて、サインしちゃった以上しょうがないんじゃないかなという気持ちもどこかにあって、このときはその程度でした。
 それで、とりあえず調停を申し立てて、543ページにありますように、受理証明書をとって、544ページにあります通知書。これをSに送付したわけです。この当時は、今のように簡裁代理権というものがなくて、取立を止めるにはやはり調停なりの申立てをして通知しなければどうにもならないということで、こういう通知をしているわけです。内容はわりといろいろ書いてありますが、この当時商工ローンというのは非常に何でもやってくるというイメージがあって、弁護士が介入しても平気で差押をしてくるということがあったので、そういうことは不法行為になりますよという警告も記載しています。これは参考にさせていただいたのは、当時静岡県の浜松市の司法書士の人達が商工ローン問題の研究会を作ってまして、「戦闘モード」という横長の冊子を出していたんですけれども、その中にいろんな書式なども入っていまして、それをすごく参考にさせていただいて、こういう通知を出していきました。
 調停を申し立てたところ、これが平成11年9月30日のことなんですけれど、偶然なんですが、その次の546ページを見てください。偶然同じ日でですね、Sから訴訟が起こされてしまったわけです。これは本当にたまたまなんですが、こちらの調停申立てと向こうの訴訟が同一の日に出されたと。それで、見ると手形訴訟になっているわけなんです。こういうのは初めて見ました、このときに。で、何で手形訴訟なのかということから考えていったわけです。
 請求の原因は、原告は手形を所持しているということと、被告が手形を振り出したということと、原告が手形を呈示したというそれだけの主張ですよね。手形訴訟ですので。それで500万払えということなんですけれども。
 548ページと549ページに約束手形のコピーがついているんですが、これが手形訴訟の根拠になるわけです。ご存知のように、Sという会社は契約書を取るときに、その中にこういう手形用紙を紛れ込ませておいて、いっしょにサインさせるわけです。それで、この手形用紙というのは、通常の手形交換所で決済される統一手形用紙とは違いまして、Sが勝手に作っている、私製手形、あるいはおもちゃ手形と言われているんですけれども、そういう手形要件は一応形式的には満たしているけれども、手形交換所で決済することを全く予定していなくて、単に、言ってみれば手形訴訟を起こすためにこういうものを取っていると、それだけのものなんです。こういうものをつけて手形訴訟をおこしてきたと。
 本人は、いちおう、手形というようなものがあって、そこにサインしたような記憶はあると言っていました。その当時。ですので、あ、そうなんだ、ということでやっていったんですけれども。
 550ページを見てください。調停の呼び出し状も来まして、要するに訴訟と調停が両方係属してしまったわけです。で、そのときにうんと悩んで、いろんな人に質問したり聞いたりして、訴訟手続きの中止という制度があるよということを教えてもらって、550ページの左側にあるのがその申請書なんですが。調停で解決を図ろうとしているので、それが解決するまで訴訟の手続きを中止してくださいと、そういう申請ができるということでやってみました。けれど、中止はされずに訴訟は訴訟で進めますということにされてしまいました(笑)。
 それから、551ページで、答弁書。いちおう答弁書を出さなければいけないものですから、出しまして、争うということで出したんですが、手形訴訟の場合は証拠制限などがあって、争うといっても限界があるわけです。証人尋問ができるわけでもなく、結局その手形にサインして振り出しているでしょうと。それが間違いないんだったら判決を出しますというのが手形訴訟ですから、簡易迅速に債務名義を出すというのが趣旨ですから。
 553ページに移送の申立てというのがあるんですが。長野県は広いもんですから、相談者と私がいるところというのは長野県の真ん中辺のところなんですが、この裁判が起こされたのは北端の長野市というところなものですから、高速道路で行っても片道1時間半くらいかかっちゃいますので、毎回行っていられないということで、こっちの松本支部に移してくれということを言ったんですけれども、これ正確に言うと移送じゃなくて、同じ地裁の管内のやりとりですから回付ということになるようです。これは間違えました(笑)。回付の申請ということになるらしいです。こういう申請もしたんですけれども、これも無視されまして、結局判決が出てしまったわけです。555ページです。手形判決が出まして、500万払えという判決が、まず出てしまったわけです。これが平成11年11月2日付けです。これはもう、本当に簡単に出てしまいました。
(つづく)

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