2014/08/07

消費者被害救済のための勉強会


消費者被害救済のための勉強会(講義用原稿)
              長野県司法書士会消費者問題対策委員会
                             報告 小口一成
              平成16年9月16日 於:松本市勤労者福祉センター

本日の勉強会の趣旨
 いわゆる「消費者問題」にこれから取り組もうとする際のアプローチの仕方を、とりあえず次のように分類してみます。

1 事例からのアプローチ:相談会の開催等を通じて生の事件を受任することにより自ら勉強するようになる
2 法体系からのアプローチ:基本的な法体系を理解することにより事件の受任に対する不安を少しでも軽減する→相談会の開催等を通じて生の事件を受任することにより自ら勉強するようになる

 ここで強調したいのは、あくまでも「生の事件を受任する」ことにより、「自ら勉強するようになる」ことこそが重要だということです。ですが、それでは話が終わってしまいますので、「あえてそこに一歩踏み出す」ための足がかりとして、基本的な法体系のイメージだけでもつかんでおこうというのが本日の勉強会の趣旨です。したがってあまり細かな議論はしません。そこから先は各自の研究に期待するものです。

ポイント(心構え)
 ・いろいろ考えているよりまずは事件を受ける(110番開催はそのきっかけに過ぎない)
 ・本を買う(そのためにはお金を惜しまない)
 ・各種研修会、研究会、シンポジウムに積極的に参加する(そのためにはお金を惜しまない)
 ・勉強会の講師を自ら買って出る。又は自ら企画する(そのためには時間を惜しまない)
 ・情報の共有をはかる(自分のためにもなる)

 それでは前置きはこのくらいにして、本題に入ります。

第1 法体系について
1 序
 まずはこの分野における法体系の流れをつかんでおきましょう。
 法の適用の順序の問題です。ここでは、個別法→消費者契約法→民法 という「大まかな」流れをつかんでいただければけっこうです(消費者契約法11条)。
 個別法とは何のことでしょう。
 特定商取引法、割賦販売法、貸金業規制法、出資法…その他にもたくさんあります。
 これらは業法とも呼ばれ、行政上の見地から「事業者の規制」に重きを置いています。
 各個別法の目的規定(第1条)を見ていただければそのことが一目瞭然だと思います。
 そのため、民事上の効果について直接規定しているわけではありませんが、違反した場合に罰則が科されている場合が少なくないことから、法違反を根拠に事業者の不法行為責任を追及するといった活用の仕方も考えられます。その意味では民事法的な性質も有していると言えなくもありません。
 なお例外として、クーリングオフ、あるいは平成16年の特定商取引法改正によって創設された取消権などの条文は純粋な民事規定です。

2 特定商取引法
 まずは代表的な個別法である特定商取引法について見ておきましょう。
 第1条に法の目的が書かれています。「購入者等の利益保護を図る」という部分がポイントになります。
(1)訪問販売
 まずは「訪問販売」についてです。
 2条①で、「訪問販売」の定義がされています。
それによれば、「営業所等」以外の場所で行う「指定商品」「指定権利」の販売又は「指定役務」の提供を訪問販売というとされています。
また、「営業所等」において行う場合でも、特定の誘引方法による場合には訪問販売にあたるとされています。キャッチセールス、アポイントセールスなどがこれに該当します。施行令1条を確認してみてください。
「営業所等」とは、施行規則1条に記載された場所のことです。
 「指定商品」とは、別表1に記載された物品のことです。
 「指定権利」とは、別表2に記載された権利のことです。
 「指定役務」とは、別表3に記載された役務のことです。
 とりあえず各表をざっと確認しておきましょう。
 訪問販売については、9条でクーリングオフの要件等が定められていること、3条から10条において各種の行為規制がされていることを、とりあえず押さえておきましょう。
(2)電話勧誘販売
 次は「電話勧誘販売」です。
2条③で、「電話勧誘販売」の定義がされています。確認しておきましょう。
 電話勧誘販売については、24条でクーリングオフの要件等が定められていること、16条から25条において各種の行為規制がされていることを、とりあえず押さえておきましょう。
(3)連鎖販売取引
 次は「連鎖販売取引」です。
 連鎖販売取引については、33条に定義規定があります。確認しておきましょう。
 連鎖販売取引については、40条でクーリングオフの要件等が定められていること、33条から39条で各種の行為規制がされていることを、とりあえず押さえておきましょう。
(4)特定継続的役務提供
 次は「特定継続的役務提供」です。
 特定継続的役務提供については、41条に定義規定があります。確認しておきましょう。
 特定継続的役務提供については、48条でクーリングオフの要件等が定められていること、49条で中途解約時の違約金の制限がされていること、42条から47条で各種の行為規制がされていることを、とりあえず押さえておきましょう。
 なお、平成15年改正により、パソコン教室と結婚情報紹介サービスが追加されたことに注意してください。
(5)業務提供誘引販売取引
 次は「業務提供誘引販売取引」です。
 業務提供誘引販売取引については、51条に定義規定があります。確認しておきましょう。 
 業務提供誘引販売取引については、58条でクーリングオフの要件等が定められていること、52条から57条で各種の行為規制がされていることを、とりあえず押さえておきましょう。
(6)雑則
 雑則(第6章)にも意外と重要な規定がおかれています。
 「ネガティブオプション」について、59条に規定があります。確認しておきましょう。
 「主務大臣に対する申出」について、60条に規定があります。確認しておきましょう。
 「報告及び立入検査」について、66条に規定があります。確認しておきましょう。
 「主務大臣」とは誰のことでしょう。67条に規定があります。確認を。
 「都道府県知事の権限」につき、68条に規定があります。確認ください。
(7)罰則 
 罰則(第7章)については、刑事罰の対象とされている事業者の行為には具体的にどんなものがあるのかを、実際に条文をあたりながら整理しておきましょう。ここの部分を頭に叩き込んでおけば、業者に対する警告文の送付や交渉の場面でもきっと役に立つと思います。
(8)平成16年改正について
  今年も、特定商取引法及び割賦販売法の重要な改正がありました。消費者法ニュース60号221頁以下に解説がありますので参考にしてください。(ここ数年、毎年のように改正がされていますので、チェックするのが大変です。)

3 割賦販売法
 次に、割賦販売法についても簡単に触れておきます。
 やはり目的から入ります。第1条です。「購入者等の利益を保護」ここがポイントになります。
 「割賦販売」の定義が2条①にあります。確認してください。
 「ローン提携販売」の定義は2条②です。別紙図1を参照してください。
 「割賦購入あっせん」の定義は2条③です。別紙図2、図3を参照してください。
 なお、上記のいずれについても、「指定商品」、「指定権利」の販売又は「指定役務」の提供であることが要件とされていることに注意してください。
 指定商品とは、別表1に記載された商品のことです。
 指定権利とは、別表1の2に記載された権利のことです。
 指定役務とは、別表1の3に記載された役務のことです。
 特定商取引法上の指定商品等とは微妙に異なっているようです。理由はわかりません…
 なお、平成15年改正によりパソコン教室、結婚情報紹介サービスが新たに指定権利、指定役務に追加されたことに注意しましょう。
 割賦販売法においても、特定商取引法と同様、事業者に対する書面交付義務などの各種規制が設けられています。これらは特定商取引法と競合して適用があるものと考えられます。
また、割賦販売法においても、クーリングオフの規定が設けられています(4条の4)が、特定商取引法と競合する場合には特定商取引法が優先して適用されることに注意しておきましょう(4条の4⑧参照)。
その他、契約解除の制限(5条)、損害賠償の額の制限(6条)についても条文をあたっておきましょう。
 抗弁権の接続(30条の4、30条の5、29条の4②③)については後で詳しく述べます。

4 消費者契約法
 続いて、消費者契約法についてです。
 まずは目的規定。第1条です。重要な条文ですので必ず確認しておいてください。
 第2条には消費者、事業者、消費者契約の定義がされています。
 第3条は事業者の情報提供についてのいわゆる努力義務規定。
 その後が意思表示の取消し、および契約条項の無効についての規定になります。
 意思表示の取消しに関する規定が、第4条から7条までです。
 契約条項の無効に関する規定が、第8条から10条までです。
 第11条は、最初に触れましたよね。
 消費者契約法については、何よりもまずは書籍を通読してみてください。
なお、平成13年4月1日に同法が施行されて以降、数は少ないですが同法を実際に適用した判例が出されています。消費者法ニュース60号56頁以下に整理されています。まだできたばかりの法律であり、今後も続々と重要な判例が出てくると思いますので、アンテナを張っておきましょう。

5 民法
 最後は民法です。
 民法については、総則に始まり、信義則、公序良俗、錯誤、詐欺、強迫、債務不履行、不法行為といったあらゆる条文が関係してきます。よってすでに述べた個別法や消費者契約法と共に当然血肉としなければならないものです。が、司法書士試験で各自勉強されていると思いますので、ここでは割愛します。

第2 その他
1 クーリングオフ
 被害救済の基本は何といってもクーリングオフです。相談を受けたら、まずはクーリングオフが可能か否かを検討してみることが鉄則です。それが駄目なら他の方法を検討するしかないということになります。
 その際のポイントは、
 (1)法定書面の交付を受けているか。書面が交付されていなければいつまででもクーリングオフが可能です。
 (2)書面の交付を受けていたとしても、記載事項は網羅されているか。記載事項に不備があれば、クーリングオフの余地はあります。判例上、どのような場合にクーリングオフが認められているかを確認しておきましょう(後述「消費者相談マニュアル」参照)。
 (3)法定書面の交付がされた日から原則8日以内であればクーリングオフが可能です。
したがって、少なくともすでに触れた特定商取引法上のクーリングオフについての条文は、しっかり押さえておきましょう。
 なお、クーリングオフに関する重要判例が、「消費者相談マニュアル」63頁以下に紹介されていますので、参考にしてください。

2 抗弁権の接続
 実務上、必ず出くわす条文が割賦販売法30条の4のいわゆる「抗弁権の接続」と呼ばれる規定です。まずはゆっくりと条文を読んでみましょう。
 30条の4の解釈については、実務上、最判平成2年2月20日(判例時報1354号76頁)が基本となります。確認しておいてください。
 同条の適用要件は、以下のとおり整理することができます。
 (1)割賦購入あっせんまたはローン提携販売であること
 (2)指定商品・指定権利・指定役務であること
 (3)支払い総額が4万円以上の取引であること(一部例外あり)
 (4)購入者のために商行為とならないこと
 実際に信販会社に対抗することができる事由にはどんなものがあるのでしょうか。
通達によれば、「原則として、商品の販売について販売業者に対して主張しうる事由は、およそこれをもってあっせん業者に対抗することができる事由になる」とされています。消費者六法等に掲載されていますので、確認してみてください。
 次に、対抗の内容です。「対抗できる」とはどういう意味なのかということです。これについても通達に基本的な考え方が示されていますので、確認しておいてください。
 この点に関連して問題となるのは、信販会社に対して既払い金の返還請求ができるかということです。既払い金の返還については販売店に請求するのが通常であるところ、悪質商法による被害事例などにおいては、すでに販売店が倒産してしまっている等の理由により、販売店から回収することが困難なケースが少なくないことから問題となるわけです。
 30条の4の解釈上、信販会社に対し既払い金の返還を請求することはできないというのが一応判例の考え方です。
 しかしながら、販売店の営業行為につき、信販会社の故意過失が認められる場合には、信販会社に対し、不法行為による損害賠償請求が可能となるでしょう。
さらに最近では、消費者契約法5条により「立替払い契約自体を取り消す」ことにより信販会社に対する既払い金の返還請求も可能となるのではないかとの考え方も示されています。
                                 以上

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