2014/07/30

長野県ヤミ金融被害者救済緊急対策会議について


長野県ヤミ金融被害者救済緊急対策会議について
                諏訪支部 小口一成

1 ヤミ金問題の広がり
 私が初めてヤミ金被害者からの相談を受けたのは、平成12年秋のことだ。その人は東京の業者から2万円を借り、10日毎に1万円を利息として支払うというような形で6社くらいと関わっていたと思う。
 当時は「ヤミ金」が今ほどに蔓延っておらず、どのように対応したらよいかわからなかった。そこでとりあえず「受任通知」を送り、一方で債務者の手持ちの資料をもとに利息制限法に基づいて再計算をしたうえで、過払い金の返還を求める少額訴訟を提起し、回収を図ることができた。もうお気づきかと思うが、今ではヤミ金処理において利息制限法に基づく充当計算は不要であり、公序良俗違反及び不法原因給付理論に基づき債務者が払った金の全額を返還請求するのが実務の常識となっている。
 ちなみに上記の私の事件処理については平成13年春頃の会報信濃に掲載していただいたのだが、その紙面上、このようなヤミ金は本来刑事告訴・告発すべきであるが、それよりもまずは1人でも多くの司法書士が相談を受け、民事上の解決を図ることが先決だというようなことを書いた気がする。そのときは、まさかここまでヤミ金が蔓延るとは思ってもいなかった。当時の私の認識は誤っていたのであろうか…。
 その後のヤミ金の急増、被害の深刻化は言うまでもない。

2 個別の取組みとその限界
 平成13年頃から長野県内においてもヤミ金の被害が目立つようになる。それに伴い各弁護士、司法書士事務所にも相談が多く寄せられるようになったが、当初は各事務所が任意交渉、不当利得返還訴訟の提起、刑事告発等、個別の対応をしているに過ぎなかった。しかし、そのような方式ではもぐら叩きをしているに過ぎず(目の前の債務者の問題を解決したとしても、相手のヤミ金はまた別の債務者に貸し付けることで新たな被害を生むことは目に見えている)、組織的な対応が必要であるとの認識が深まる。そのような中、県内の弁護士、司法書士らの有志が集い、「ヤミ金融を告発する長野連絡会」を結成し、定期的な「集団告発」を実施するに至る。このような県内の取組みは、全国的に見ても非常にスピーディーなものであった。長野県においてこのような先駆的な取組みが可能となった背景には、前の年に長野で開催されたクレサラ全国被害者交流集会において、県内のクレサラ問題に取り組む弁護士、司法書士の間に友好的な関係が構築されたことと、個人的には上田支部の荻原世志成会員の献身的な努力に負うところが大きいと思っている。

3 対策会議の結成
 平成14年12月、全国に先駆けて、行政の主導による「ヤミ金融被害者救済緊急対策会議」(以下、対策会議と言う)が結成された。
 対策会議は、長野県生活環境部・長野消費生活センター・商工部、長野県警察本部生活安全部、財務省関東財務局長野財務事務所、長野県弁護士会、長野県司法書士会、(以下省略)他の団体で構成され、毎月1回のペースで会合を開き、ヤミ金問題についての検討を重ねている。当会からも毎回数名が会合に出席するとともに、ヤミ金問題についての各種施策の提案をしている。
 対策会議がこれまでに実施した主な施策は、以下のとおりである。
・ヤミ金業者に対する通知書の送付(構成団体の連名による)
・経済団体等に宛てた、ヤミ金被害者の離職防止のお願い
・ヤミ金情報の一元的集約
・ヤミ金の口座取引停止等に向けた取組み
・無料相談会の実施
・県民への各種啓発事業の実施
・教育機関への通知(ヤミ金から被害者の子供の通う学校に対し嫌がらせの電話等があった場合の対処について)

 すでに述べたがこのような対策会議が結成されたのは全国でも初めてのことであり、このような長野県の取組みは全国的に非常に注目されており、現に他の都道府県においても同様な対策会議が結成されつつあり、その動きは全国に広がりを見せている。

4 今後の課題
 以上のように、県内においては、個別的な対応が発展し、自然発生的に「ヤミ金融を告発する長野県連絡会」が生まれ、集団告発を重ね、そのような活動が土台となって対策会議が結成された。これにより、少なくとも県内においてはヤミ金の被害は確実に減少傾向にある。今後は、このような対策会議が全国に組織され、相互に連携を図ることが重要である。
 一方最近では、従来のヤミ金ではないが、融資をするかのように勧誘し、保証料や登録料名目で多額の金を振り込ませ、結局融資をしないという詐欺行為や、オレオレ詐欺といった新たな手口が急増している。このような新たな手口についても早急な対応が必要である。

         長野県司法書士会会報「信濃」掲載

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ヤミ金融対策法の成立と受任通知について


ヤミ金融対策法の成立と受任通知について

             消費者問題対策委員会委員長 小口一成
第1 はじめに
 深刻な社会問題となっているヤミ金融問題に対処するため、第156回国会において、ヤミ金融対策法(貸金業規制法及び出資法等の一部改正法)が成立しました。主な内容は、以下、第2のとおりです(第2のうち、2.3.及び5.は平成15年9月1日に施行)。
 なお、第2の4.「違法な取立て行為の規制強化」に関しては、司法書士の執務に直接影響のある重要な改正点を含んでいるため、第3「受任通知の問題」において詳しく述べたいと思います。

第2 ヤミ金融対策法の主な内容
1.貸金業登録制度の強化
 貸金業登録の審査について、申請者等の本人確認を義務化するとともに、人的要件(例えば、暴力団員の排除)の強化や財産的要件の追加、各営業店への主任者の設置の義務付けにより、さらに厳格な登録審査を行うこととなりました。

2.罰則の大幅な引上げ
 高金利貸付け、無登録営業に関する罰則が大幅に引き上げられました。
 また、高金利を要求する行為そのものも罰則の対象となりました。
 高金利違反 ⇒ 5年以下の懲役、1千万円(法人の場合3千万円)以下の罰金
 無登録営業 ⇒ 5年以下の懲役、1千万円(法人の場合1億円)以下の罰金

3.違法な広告、勧誘行為の規制
 無登録業者の広告、勧誘行為について罰則が適用されるようになりました。
 罰則の新設 ⇒ 百万円以下の罰金

4.違法な取立行為の規制強化
 正当な理由のない夜間の取立て、勤務先等居宅以外への電話や訪問、第三者への弁済の要求など行ってはならない取立行為の具体例について、法律で明確にされるとともに、罰則も引き上げられました(無登録業者の行為も罰則の対象となります)。
 罰則の引上げ ⇒ 2年以下の懲役、3百万円以下の罰金

5.年利109.5%を超える利息での貸付契約の無効化
 貸金業者が年利109.5%を超える利息での貸付契約を行った場合には、当該契約は無効であり、利息については一切支払う必要がありません。(なお、いわゆる不法原因給付を理由に元本の返済を不要とするか否かについては、司法判断によることとされました。)

第3 受任通知の問題
1. 従来の取扱い
 従来、金融庁事務ガイドラインでは、貸金業者に対して、「債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨の通知、又は調停、破産その他裁判手続をとったことの通知を受けた後に、正当な理由なく支払請求をすること」を禁止していました。上記ガイドラインには「司法書士に委任した旨の通知」は含まれていないことから、司法書士による受任通知には貸金業者からの取立て禁止の効果が与えられていませんでした。

2.金融庁事務ガイドラインの改正
 平成15年4月1日、上記ガイドラインが改正され、貸金業者に対して、「債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨の通知、司法書士法第3条第1項第6号及び第7号に規定する業務(簡裁訴訟代理関係業務)に関する権限を同法第3条第2項に規定する司法書士に委任した旨の通知、又は調停、破産その他裁判手続をとったことの通知を受けた後に、正当な理由なく支払請求をすること」が禁止されました。
 これにより、司法書士法3条2項に規定する司法書士(以下、認定司法書士という)による受任通知には、弁護士と同様の取立禁止の効果が付与されることになりました。

3. 貸金業法の改正
 平成15年7月25日、上記ガイドラインを明文化する形で、貸金業法が下記のとおり改正されました。なお、下記の改正点については8月1日の公布後6ヶ月以内に施行することとされています。

 第21条第1項中「貸金業者」を「貸金業を営む者」に、「又はその」を「又は次の各号に掲げる言動その他の人の」に改め、同項に次の各号を加える。
  一~五 (省略)
  六 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。

 上記の改正のポイントは、以下の3点であると思われます。
① これまでガイドライン上の義務に過ぎなかった受任通知の効果を法的義務に高めた
② 違反した場合を刑罰の対象とした(2年以下の懲役、3百万円以下の罰金。併科あり)
③ 認定司法書士に限らず、すべての司法書士(司法書士法人を含む)を対象とした(*注1)

4.今後の執務への影響
 上記2のガイドラインの改正はすでに施行されていることから、認定司法書士に簡裁訴訟代理関係業務(任意整理を含む)に関する権限を委任した旨の通知には、すでに取立て禁止の効果が与えられていることになります。
 また、上記3の貸金業法の改正は公布後6ヶ月以内に施行することとされているので、施行後は、司法書士(認定司法書士に限らない (*注2))に債務の処理を委託した旨の通知に対して、取立て禁止の効果が付与され、貸金業者がこれに違反した場合は2年以下の懲役又は3百万円以下の罰金(併科あり)が科されることとなります。
 注意していただきたいのは、ガイドライン上は、「簡裁訴訟代理関係業務に関する権限を委任」した場合を対象としているのに対し、貸金業法上は、「債務の処理を委託」した場合を対象としている点です。貸金業法上の、「債務の処理を委託」した場合とは、認定司法書士については簡裁訴訟代理関係業務の委任及び裁判所提出書類の作成の委託の両者を指し、認定司法書士以外の司法書士については裁判所提出書類の作成を委託した場合を指しているものと思われます(*注3)。
 なお、「裁判手続をとったことの通知」に取立て禁止の効果がある点はこれまでと変わりませんが、違反した場合に刑罰の対象とされた点は重要です。

           長野県司法書士会会報「信濃」掲載

*注1~3 本稿執筆の時点では、条文を素直に読んで筆者はこのように解したのであるが、その後出された金融庁の事務ガイドラインによれば、同条の司法書士とは認定司法書士を指すとの解釈が示されている。しかしながら、このような金融庁の解釈には疑問を感じざるを得ない。

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2014/07/29

ヤミ金融への対処

『ヤミ金融』への対処
                 長野県司法書士会 小口一成
1.はじめに
 10日に1割の利息を取る金融業者を俗に「トイチ」と呼ぶが、トイチどころか10日に5割、6割といった信じられない高金利を貪る業者が存在する。少なくとも筆者の地元である長野県内においては、近年被害が急増している。その多くは東京の金融業者によるものである。具体的には10万円貸して10日ごとに5万円を返済させるというもの(10日で5割)や、5万円貸して10日ごとに3万円を返済させるというもの(10日で6割)である。その多くは東京都知事登録を受けたうえで、融資を勧誘するダイレクトメールを全国の多重債務者(過去に破産をしていたり、債務整理をしたことがあったりで通常のサラ金からは融資が受けられない人)に送りつけ、彼らを食い物にしているのである。このような悪質な業者の営業を行政が放置していることがそもそも問題であるが、このことはひとまず棚上げにし、このような闇の金融業者(以下、「ヤミ金融」と言う)の被害者から相談を受けた場合、どのような対処が考えられるであろうか。本稿で紹介する事案は、筆者にとって初めての経験であり、手探りしながら進めていったものである。
 したがって、全国の経験豊かな同職諸氏にとっては、おそらく釈迦に説法であろうし、これが唯一にして最良の対処法であるとは到底言い難い。しかしながら、少なくとも地方における被害者の支援を通じてヤミ金融の急増に一矢を報いたいとの思いから、身の程をわきまえずに報告させていただく次第である。
 なお、ヤミ金融の中には事業者を対象とし、融資の際に小切手や手形を振出させるもの(システム金融が典型例である)も存在するが、ここで取り上げるのは小切手や手形を利用せずに、サラリーマンや主婦を相手に無担保で数万円~数十万円の小口の融資を行う業者である。

2.事案の概要
 平成12年10月、T市の法律相談会を通じて依頼を受けた。相談者は県内在住、年齢50才前後の独身女性である。まずは事務所に来てもらい、面談の結果、次のような事情が明らかとなった。
 すなわち、過去に2度に渡って東京の整理屋提携弁護士(無論、相談者がそのように話したわけではなく、後から筆者が判断したことだが)に依頼しており、そのことでかえって負債を増大させてしまったこと。したがって現在2人目の提携弁護士に依頼した形になっていること。さらに提携弁護士が受任し、任意整理(その内容はともかく)を経たことにより、信用情報機関に事故情報が登録されており、通常のサラ金業者からは借り入れることができない状態であること。そのような時期に、タイミングよく融資を勧誘するダイレクトメールが届くようになり、生活に困っていたためつい手を出してしまったこと。その結果、半年ほどの間に相次いで東京のヤミ金融6社から融資を受け、瞬く間に返済に行き詰まってしまったこと。

3.解任通知・資料開示請求
 整理屋提携弁護士の特徴及び見分け方については、「クレサラ白書」等に東京の宇都宮健児弁護士が詳述されているので参照されたい。相談者の話しを詳しく聞くうちに、これは提携弁護士に間違いないと確信するに至った。そこでまずは提携弁護士を解任するべく、本人名で内容証明郵便を送ることにした。
 それと同時に、ヤミ金融六社に対しては、とりあえず本人と司法書士の連名で、取引明細を送るよう、通知を出してみることにした。というのもヤミ金融の場合、貸付に際して契約書を交付していないことがほとんどであり、返済は銀行振込み或いは郵便為替等の方法によることから領収書も存在しない。本件でも相談者の所持する資料としてはダイレクトメール、名刺、振込みの控え、電報(「至急連絡されたし」というもの)くらいであった。
 なお、通知は名刺或いはダイレクトメールに記載された住所に宛て、さらに後のことも考えて配達証明付で発送した。配達証明にしたのは、相手方が確かにそこで営業をしている事実を確認したかったことと、後日裁判手続を取る際に訴訟書類の送達の見込みがあることがわかれば、スムーズな手続の進行が期待できるからである。
 提携弁護士事務所及びヤミ金融6社に宛てた通知はいずれも配達証明が得られた。
 その後の相手方の反応であるが、予想に反し、いたって静かなものであった(電話で怒鳴り込んで来ることを覚悟していたのだが、そのようなことはなかった)。
 すなわち提携弁護士事務所からは何の連絡もなく、ヤミ金融からも電話がきたのは3社ほどであったと記憶している。さらにありがたいことには、この通知を出したことにより、本人への請求は以後、ほとんど息を潜めた。
 通知を出して2週間ほどは待っただろうか。こちらの請求に応じて資料を送ってきたのは1社だけであった。しかもその1社というのは、相談者が返済に追われて最後に手を出した業者であり、5万円を借りたきり一度も返済ができていない業者であったから、妙に納得したものである。

4.合意書の作成(元金のみの返済)
 この業者(以下、Aという)については若干面白いやり取りがあったので述べてみる。というのも、当初Aからは、7万5千円を貸し渡したとする借用証書が送られてきたが、相談者の話しでは借りたのは5万円であるということだったので、そのままにしておいた。するとAから電話があり、「書類、送りましたけど」と言うので、「本人は5万円しか借りてないのだから、こんなものを送ってきてもどうしようもない。5万円貸しましたという書類を送るように。」と多少強気に出たところ、数日後、素直に5万円貸し付けたとする計算書を送ってきた。そこでこのAについては、本人の了解のもとに元金5万円のみ返済する代わりに以後一切の請求をしないこととする合意書(案)を作成し、Aに送付したところ、Aからはすぐに署名捺印したものが返送されてきた。さっそく5万円を本人に振り込ませ、Aについては一応の解決を見た(注1)。

5. 少額訴訟の提起
 A以外の5社については、仕方が無いので相談者の記憶と所持する資料(振込書の控え)のみに基づいて、利息制限法に基づく再計算を試みた。その結果、3社についてはすでに過払いとなっており、2社についてはわずかながら未払いが残ることがわかった(注2)。そこで、未払いのある2社についてはとりあえず置いておき(債務者からの資料送付請求にもかかわらず何ら意思表示が無いため、もはや回収の意思が無いものと判断した。その後現在に至るも連絡無し。)、過払いの3社に対しては不当利得の返還を求めるべく、少額訴訟を提起することにした。もっともこの時点では、相手が相手だけに、実際に過払金を取り戻すことを期待したわけではなく、勝訴判決が確定すれば、少なくとも相談者には法律上支払義務の無いことが確認され、生活の安定が得られるであろうことを目論んだに過ぎない。ちなみに管轄の問題について述べると、この手の訴訟は金銭債務=持参債務が原則であることから、義務履行地の裁判所にも管轄が認められ、被告が東京の業者であっても相談者の地元の裁判所に提起することが可能である。この点については裁判所書記官からも聞かれたが、上記のとおりの説明をし、理解をしていただいた。さらに少額訴訟を選択した理由としては、訴額が30万円に満たなかったのは言うまでもないが、相談者自身、精神的に疲弊していたのと日中は仕事があるため何度も裁判所に出頭することは困難であったことが上げられる。
 なお、訴訟提起に先立ち、相手方を確定するため東京都貸金業係に問い合わせたところ、相手方業者はいずれも都知事登録を受けた貸金業者であることがわかった。また、名刺等には「○○コーポレーション」「(株)○○」とあたかも法人であるかのような記載があったが、いずれも法人登記は存在せず、個人業者であった。
 訴訟提起後、裁判所から被告らに訴状が送達されると、面白いことに3社ともに書類作成者である筆者に電話をかけてきた(訴状には書類作成司法書士の氏名と連絡先も記入するようにしている)。さらに驚いたことに、3社ともが口を揃えたように、「お金は返しますので、訴えは取下げてもらいたい」と申し出てきたのである。そこで相談者の了解のもと、相手方には次のように伝えた。
 「(相談者の了解が得られたので)合意書を作って送りますから、署名押印のうえ、返送してください。入金を確認後、訴えは取下げます。」(ずいぶん簡略化して書いたが、実際には被告からは金額を減額してほしいだの半分なら払うだの言われ、私は弁護士ではないので交渉はできないから本人に伝えてから返事する、というようにした。弁護士法違反で足元をすくわれては目的が達せられないことになる。)
 その数日後、2社については署名押印された合意書が返送され、過払金も無事入金されたので訴えを取下げた。残る1社については(ここが過払金額が22万円余りと最も大きかった)どういうわけか口頭弁論期日に至るまで入金が無かった。
 そこで仕方なく相談者と共に口頭弁論期日に出頭した(もちろん私は傍聴人として)。ひょっとして被告が出頭してくるかなと思ったがそんなこともなく、被告欠席のまま弁論が開始され、裁判官から原告に対し、少額訴訟手続の説明と、事案について若干の質問(「被告の営業所は新宿駅の近くだったんですね」というような質問)があっただけで、わずか5分足らずで弁論終結となり、直ちに判決言渡しとなった。
 「主文。被告は原告に対し、金22万7280円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」請求の趣旨記載のとおりの判決であった。
なお、意外なことに後日被告から電話があり、全額払うから振込先を教えてほしいと言うではないか。振込先はすでに指示してあったはずだが、と思いながら再度指示したところ、翌日全額が振込まれ、一見落着を見た。被告が判決に従わない場合は強制執行乃至刑事告訴も検討していたのだが。

6.終わりに
 今回の事案を経験してみて思ったのは、ヤミ金融は刑罰法規に違反した営業をしているという後ろめたさゆえに、裁判手続というものを必要以上に嫌うのではないか、ということである。今回のことで、相談者にはずいぶん感謝されたと思う。
 しかし、たまたま今回の相談者はこれで救われたのかもしれないが、相手方たるヤミ金融はおそらく、たいしたダメージもなく今も営業を続け、相変わらず出資法違反の暴利を貪っていることであろう(その陰でいったいどれだけの人が泣いていることだろう)。
 今回は、単に一債務者のための民事上の手続をしたにすぎないのであり、大局的に見れば、過払金の返還を受ける受けないにかかわらず、行政処分の申立て、刑事告訴まで断固としてやりぬくべきだとの考え方もあろう。しかし、優先順位で考えるならば、たとえ民事上の解決にとどまるとしても、一人でも多くの司法書士がこの問題に取り組むことの重要性を今は訴えたい。

         01/04/27(金)
         日本司法書士会連合会月報「司法書士」掲載

(注1、注2) なお、現在の実務では、ヤミ金融を相手とする交渉においては利息制限法に基づく引き直し計算すらも不要であり、金銭消費貸借契約そのものが公序良俗違反により無効であること、ヤミ金融から交付された金員は不法原因給付に該当するため元金の返還義務も無いことが、この問題に取り組む弁護士、司法書士らの共通認識となっていることに注意されたい。

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