« 消費者被害救済のための勉強会 | トップページ | シリーズ本人訴訟 商工ローンと根保証 2 »

2014/08/07

シリーズ本人訴訟 商工ローンと根保証 1


司法書士クレサラシンポジウム 分科会「商工ローンと公正証書問題」より
「商工ローンと根保証問題」~本人訴訟で闘った5年間~
平成16年10月3日 於:ホテル札幌サンプラザ

 長野の小口といいます。よろしくお願いします。この分科会のタイトルが「商工ローンと公正証書問題」ということなんですけれども、前半で私のほうで、直接公正証書の話ということではないんですが、関連はしています。なぜ関連しているかという話しもしたいと思うんですけれども。
 私のほうの話は、資料がですね、533ページから、659ページまでで、これたぶん一番多いと思うんです。資料だけは一番多いんですけれど(笑)。これすべてですね、5年かかって本人訴訟で解決したという事件です。相手はSという商工ローン業者。要するに保証人になった人が相談に来て、簡単に言いますとその人は友達に頼まれて保証人になったんですけれど、そのときの話では200万借りるからということで、保証人をしぶしぶ引き受けた。ですけれど、それから1年くらいして、とつぜんSから請求がきまして、500万払えという内容証明がきてびっくりしたと。500万なんていう保証は自分はしたつもりはない、というところがまずきっかけです。
 それが、もう平成11年6月の話しになるんですけれど、その当時、商工ローン問題というのはそれほど問題になっていませんで、どういうふうにやっていったらいいかというのも、情報もあまりなくて、いろいろ模索しながらやっていって、途中いろんなことがありまして、いろんなタイミングとか、いろんな判例が出たりとか、日栄・商工ファンド対策弁護団というものが結成されて、そういう研究会に出たりしながら情報を得ながらなんとかかんとかやっていって最終的にはそれなりの解決ができたという、まあ苦労話みたいにことになっちゃうんですけれど。
 最初に見ていただきたいのが、559ページです。これからお話することがなんで公正証書問題というものと関連してくるかという話しなんですけれども。この左側が「厳重警告書」となっていまして、これはある弁護士会からS宛に警告がなされていると。その警告の内容というのが、Sという会社は弁護士を立てずに、自分の会社の支配人に訴訟を担当させて、全国各地の裁判所に多数の手形訴訟を起こしており、弁護士法の問題があるということで、警告書を送っているわけです。それに対するSの回答、改善計画というのが右側にありまして、この中をみていただきますと、(2)のところを見ていただきますと、「訴訟の削減の一層の推進を行います。すでに取り組みを開始していることでありますが、債務名義の取得について、公正証書等を活用することを一層推進し、訴訟そのものの発生を抑止してまいります。」という、こんなものが当時、こんなやりとりがあったと。で、その後しばらくはSは今日お話しする手形訴訟というものを非常に使って債権の回収をはかって、それが、今日のお話の最後に出てくるんですけれども、Sの手形訴訟というものは、もう、言ってみれば認めないというような傾向にはなってきているわけです。その理由というのはまた説明しますけれど。
 で、それにとって代わってといいますか、非常にここにも書いてあるように、今度はそれが駄目なら公正証書を使おうというような、流れにどうもあるような気がします。ですので、公正証書の問題の前段階というか、前提としてこういう問題があったという、そういうふうな認識で聞いていただければと思います。
 直接は手形訴訟ということなんですけれども。なんで手形訴訟なのかという話しもしたいと思います。保証人に対する請求なものですから、通常は保証債務履行請求ということになるはずなんですけれども、なぜか手形訴訟ということなんです。で、結論から言いますと、手形訴訟は、もう裁判所としては、Sについてはこの手形訴訟は認めないと、門前払いするというような流れに最近はなってきています。ですが、それで解決したわけではなくて、手形訴訟という形式では認めないけれど、普通の保証債務の履行を請求する裁判というのはこれからもあるでしょうし、そういう意味ではすべて解決したというわけではないということです。ですので、手形訴訟云々という話しよりも、なぜこの人は200万のつもりでサインしたんだけど、500万の請求を受けることになったのか。結論から言っちゃいますと、この裁判は、正直言って500万が200万になればしめたものだという感覚でやっていました。200万になればいいだろうと。結果的には50万払って和解ということで、勝訴的な和解をすることができたんですけれども。そういういろいろな問題点の中で、どういうふうにして訴訟が進んでいったかというようなお話になるかと思います。
 では資料に戻っていただきまして、534ページから、資料を見ながらお話ししていきたいと思います。この資料は、なるべく順序どおりに綴ってあるものですから、後でじっくりお読みいただければ、イメージはつかんでいただけると思います。
 534ページに通知書というものがありますが、これがきっかけになります。この内容証明が、保証人にされた本人のところに届いた。ここに書いてありますように、後記債務を即時一括して返済していただかなくてはならなくなりましたと。後記債務というのが一番左端に書いてありまして、「○○様連帯根保証限度額金五百万円」ということです。ですので、500万を一括で払えという請求が来てびっくりしたというところが始まりになります。
 で、536頁を見ていただきますと、仮差押決定とあるんですけれど。この仮差が来るまでにだいたいひと月くらい経っているんですけれど、その間、相談を受けまして、どうしたらいいかわからず、聞いてみましたら、他にも保証人が6人も7人もいるらしいということがわかりまして、そうすると他の保証人が払ってしまう可能性もあるので、ちょっと様子を見るしかないね、というような話しだったんです最初は。ところが、そんなことをやってましたら、一ヶ月くらいして仮差押がされまして、何を押さえられたかと言いますと、見ていただくとわかりますが、農協の定期預金です。この人農家の息子で、当時20代のまだ若い息子さんだったんですけれど、お父さんの農業を手伝っているということで、給料を押さえられるというおそれはなかったんですが、農協の預金を仮差押されてしまったということで、このままにしておけないなということになったわけです。
 続いて540ページを見ていただきますと、平成11年8月付けでまた通知がきまして、仮差押をさせていただきましたと。原則的には根保証500万一括ですよというような、圧力がかけられてきたということです。
 この間、私も非常にどうしたらいいか悩んで、いろんな人に聞いたりとか、弁護士の知っている人に相談したりとかしながら、司法書士の仲間にももちろん相談して、とりあえず調停を申し立てるしかないんじゃないかと。今は特定調停というものがありますけれど、この当時はまだ特定調停というものが制度として無くて、通常の民事調停の申立てをして、一括は無理ですから、債務額を確定してもらって、本当に払わなければならない債務があるのなら、分割で払っていこうというような調停をやっていくしかないだろうということで、541ページにありますように、当時はまだ縦書きでしたけれど、債務弁済調停の申立てをしたと。この内容はどうということもなくて、普通に利息制限法で引き直して、その後の金額を3年程度で分割払いにしたいという内容です。このときは500万を200万に、というところまで目指していたわけではなくて、サインしちゃった以上しょうがないんじゃないかなという気持ちもどこかにあって、このときはその程度でした。
 それで、とりあえず調停を申し立てて、543ページにありますように、受理証明書をとって、544ページにあります通知書。これをSに送付したわけです。この当時は、今のように簡裁代理権というものがなくて、取立を止めるにはやはり調停なりの申立てをして通知しなければどうにもならないということで、こういう通知をしているわけです。内容はわりといろいろ書いてありますが、この当時商工ローンというのは非常に何でもやってくるというイメージがあって、弁護士が介入しても平気で差押をしてくるということがあったので、そういうことは不法行為になりますよという警告も記載しています。これは参考にさせていただいたのは、当時静岡県の浜松市の司法書士の人達が商工ローン問題の研究会を作ってまして、「戦闘モード」という横長の冊子を出していたんですけれども、その中にいろんな書式なども入っていまして、それをすごく参考にさせていただいて、こういう通知を出していきました。
 調停を申し立てたところ、これが平成11年9月30日のことなんですけれど、偶然なんですが、その次の546ページを見てください。偶然同じ日でですね、Sから訴訟が起こされてしまったわけです。これは本当にたまたまなんですが、こちらの調停申立てと向こうの訴訟が同一の日に出されたと。それで、見ると手形訴訟になっているわけなんです。こういうのは初めて見ました、このときに。で、何で手形訴訟なのかということから考えていったわけです。
 請求の原因は、原告は手形を所持しているということと、被告が手形を振り出したということと、原告が手形を呈示したというそれだけの主張ですよね。手形訴訟ですので。それで500万払えということなんですけれども。
 548ページと549ページに約束手形のコピーがついているんですが、これが手形訴訟の根拠になるわけです。ご存知のように、Sという会社は契約書を取るときに、その中にこういう手形用紙を紛れ込ませておいて、いっしょにサインさせるわけです。それで、この手形用紙というのは、通常の手形交換所で決済される統一手形用紙とは違いまして、Sが勝手に作っている、私製手形、あるいはおもちゃ手形と言われているんですけれども、そういう手形要件は一応形式的には満たしているけれども、手形交換所で決済することを全く予定していなくて、単に、言ってみれば手形訴訟を起こすためにこういうものを取っていると、それだけのものなんです。こういうものをつけて手形訴訟をおこしてきたと。
 本人は、いちおう、手形というようなものがあって、そこにサインしたような記憶はあると言っていました。その当時。ですので、あ、そうなんだ、ということでやっていったんですけれども。
 550ページを見てください。調停の呼び出し状も来まして、要するに訴訟と調停が両方係属してしまったわけです。で、そのときにうんと悩んで、いろんな人に質問したり聞いたりして、訴訟手続きの中止という制度があるよということを教えてもらって、550ページの左側にあるのがその申請書なんですが。調停で解決を図ろうとしているので、それが解決するまで訴訟の手続きを中止してくださいと、そういう申請ができるということでやってみました。けれど、中止はされずに訴訟は訴訟で進めますということにされてしまいました(笑)。
 それから、551ページで、答弁書。いちおう答弁書を出さなければいけないものですから、出しまして、争うということで出したんですが、手形訴訟の場合は証拠制限などがあって、争うといっても限界があるわけです。証人尋問ができるわけでもなく、結局その手形にサインして振り出しているでしょうと。それが間違いないんだったら判決を出しますというのが手形訴訟ですから、簡易迅速に債務名義を出すというのが趣旨ですから。
 553ページに移送の申立てというのがあるんですが。長野県は広いもんですから、相談者と私がいるところというのは長野県の真ん中辺のところなんですが、この裁判が起こされたのは北端の長野市というところなものですから、高速道路で行っても片道1時間半くらいかかっちゃいますので、毎回行っていられないということで、こっちの松本支部に移してくれということを言ったんですけれども、これ正確に言うと移送じゃなくて、同じ地裁の管内のやりとりですから回付ということになるようです。これは間違えました(笑)。回付の申請ということになるらしいです。こういう申請もしたんですけれども、これも無視されまして、結局判決が出てしまったわけです。555ページです。手形判決が出まして、500万払えという判決が、まず出てしまったわけです。これが平成11年11月2日付けです。これはもう、本当に簡単に出てしまいました。
(つづく)

|

« 消費者被害救済のための勉強会 | トップページ | シリーズ本人訴訟 商工ローンと根保証 2 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: シリーズ本人訴訟 商工ローンと根保証 1:

« 消費者被害救済のための勉強会 | トップページ | シリーズ本人訴訟 商工ローンと根保証 2 »