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2014/07/30

ヤミ金融対策法の成立と受任通知について


ヤミ金融対策法の成立と受任通知について

             消費者問題対策委員会委員長 小口一成
第1 はじめに
 深刻な社会問題となっているヤミ金融問題に対処するため、第156回国会において、ヤミ金融対策法(貸金業規制法及び出資法等の一部改正法)が成立しました。主な内容は、以下、第2のとおりです(第2のうち、2.3.及び5.は平成15年9月1日に施行)。
 なお、第2の4.「違法な取立て行為の規制強化」に関しては、司法書士の執務に直接影響のある重要な改正点を含んでいるため、第3「受任通知の問題」において詳しく述べたいと思います。

第2 ヤミ金融対策法の主な内容
1.貸金業登録制度の強化
 貸金業登録の審査について、申請者等の本人確認を義務化するとともに、人的要件(例えば、暴力団員の排除)の強化や財産的要件の追加、各営業店への主任者の設置の義務付けにより、さらに厳格な登録審査を行うこととなりました。

2.罰則の大幅な引上げ
 高金利貸付け、無登録営業に関する罰則が大幅に引き上げられました。
 また、高金利を要求する行為そのものも罰則の対象となりました。
 高金利違反 ⇒ 5年以下の懲役、1千万円(法人の場合3千万円)以下の罰金
 無登録営業 ⇒ 5年以下の懲役、1千万円(法人の場合1億円)以下の罰金

3.違法な広告、勧誘行為の規制
 無登録業者の広告、勧誘行為について罰則が適用されるようになりました。
 罰則の新設 ⇒ 百万円以下の罰金

4.違法な取立行為の規制強化
 正当な理由のない夜間の取立て、勤務先等居宅以外への電話や訪問、第三者への弁済の要求など行ってはならない取立行為の具体例について、法律で明確にされるとともに、罰則も引き上げられました(無登録業者の行為も罰則の対象となります)。
 罰則の引上げ ⇒ 2年以下の懲役、3百万円以下の罰金

5.年利109.5%を超える利息での貸付契約の無効化
 貸金業者が年利109.5%を超える利息での貸付契約を行った場合には、当該契約は無効であり、利息については一切支払う必要がありません。(なお、いわゆる不法原因給付を理由に元本の返済を不要とするか否かについては、司法判断によることとされました。)

第3 受任通知の問題
1. 従来の取扱い
 従来、金融庁事務ガイドラインでは、貸金業者に対して、「債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨の通知、又は調停、破産その他裁判手続をとったことの通知を受けた後に、正当な理由なく支払請求をすること」を禁止していました。上記ガイドラインには「司法書士に委任した旨の通知」は含まれていないことから、司法書士による受任通知には貸金業者からの取立て禁止の効果が与えられていませんでした。

2.金融庁事務ガイドラインの改正
 平成15年4月1日、上記ガイドラインが改正され、貸金業者に対して、「債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨の通知、司法書士法第3条第1項第6号及び第7号に規定する業務(簡裁訴訟代理関係業務)に関する権限を同法第3条第2項に規定する司法書士に委任した旨の通知、又は調停、破産その他裁判手続をとったことの通知を受けた後に、正当な理由なく支払請求をすること」が禁止されました。
 これにより、司法書士法3条2項に規定する司法書士(以下、認定司法書士という)による受任通知には、弁護士と同様の取立禁止の効果が付与されることになりました。

3. 貸金業法の改正
 平成15年7月25日、上記ガイドラインを明文化する形で、貸金業法が下記のとおり改正されました。なお、下記の改正点については8月1日の公布後6ヶ月以内に施行することとされています。

 第21条第1項中「貸金業者」を「貸金業を営む者」に、「又はその」を「又は次の各号に掲げる言動その他の人の」に改め、同項に次の各号を加える。
  一~五 (省略)
  六 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。

 上記の改正のポイントは、以下の3点であると思われます。
① これまでガイドライン上の義務に過ぎなかった受任通知の効果を法的義務に高めた
② 違反した場合を刑罰の対象とした(2年以下の懲役、3百万円以下の罰金。併科あり)
③ 認定司法書士に限らず、すべての司法書士(司法書士法人を含む)を対象とした(*注1)

4.今後の執務への影響
 上記2のガイドラインの改正はすでに施行されていることから、認定司法書士に簡裁訴訟代理関係業務(任意整理を含む)に関する権限を委任した旨の通知には、すでに取立て禁止の効果が与えられていることになります。
 また、上記3の貸金業法の改正は公布後6ヶ月以内に施行することとされているので、施行後は、司法書士(認定司法書士に限らない (*注2))に債務の処理を委託した旨の通知に対して、取立て禁止の効果が付与され、貸金業者がこれに違反した場合は2年以下の懲役又は3百万円以下の罰金(併科あり)が科されることとなります。
 注意していただきたいのは、ガイドライン上は、「簡裁訴訟代理関係業務に関する権限を委任」した場合を対象としているのに対し、貸金業法上は、「債務の処理を委託」した場合を対象としている点です。貸金業法上の、「債務の処理を委託」した場合とは、認定司法書士については簡裁訴訟代理関係業務の委任及び裁判所提出書類の作成の委託の両者を指し、認定司法書士以外の司法書士については裁判所提出書類の作成を委託した場合を指しているものと思われます(*注3)。
 なお、「裁判手続をとったことの通知」に取立て禁止の効果がある点はこれまでと変わりませんが、違反した場合に刑罰の対象とされた点は重要です。

           長野県司法書士会会報「信濃」掲載

*注1~3 本稿執筆の時点では、条文を素直に読んで筆者はこのように解したのであるが、その後出された金融庁の事務ガイドラインによれば、同条の司法書士とは認定司法書士を指すとの解釈が示されている。しかしながら、このような金融庁の解釈には疑問を感じざるを得ない。

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